お役立ちコラム

~知らないうちに自社がデータの仲介や起点に?~
中小企業が知っておくべきビッグデータ活用の盲点

 「ビッグデータ」という言葉を聞いたことのある方は多いかと思います。大量かつ多種多様なデータを迅速に集計/分析することにより、企業や消費者に便益をもたらそうとする取り組みを指します。ニュースで見かけるビッグデータ事例の多くは大企業によるもので、中小企業がビッグデータ活用の主体となるケースは非常に稀です。ですが、「ビッグデータ活用における仲介や起点の役割」という点では中小企業も決して無関係ではないのです。 そこで、今回はビッグデータ活用と中小企業の関係について考えてみたいと思います。

ビッグデータを商店街の活性化施策として活用した例

 以下の例をご覧ください。「あかさたな商店街」は老舗が並ぶ歴史ある商店街ですが、最近は人通りもまばらになっています。そこで、自治体と共同で消費者を呼び込む施策を展開することにしました。各商店には消費者が持つスマートフォンと通信する端末を置きます。消費者が商店に近づくと、その商店のお買い得商品をスマートフォンに表示してくれるというものです。消費者が持つスマートフォンには専用のアプリケーションが必要ですが、一度インストールすれば全商店共通で利用できます。消費者が専用のアプリケーションに入力した属性情報(性別/年齢/趣味など)に応じた「お勧め情報」も提供可能です。商店街の入り口に近い商店Aでは商店街全体の見取り図も配布し、奥の方にある商店Cや商店Fにも来てもらえるように工夫しました。 bigdata この例の場合、「クラウド上に蓄積された大量のデータと商店街にやってきた消費者の性別/年齢/趣味といった属性を突き合わせ、各商店のお勧めをスマートフォンに表示してくれる」という点がビッグデータ活用による便益ということになります。消費者が商店の前に来た時に商店の紹介ページを表示するといったシンプルな例がまだ多いですが、上記のような取り組みは商店街の活性化策として注目を集めています。

自社が主張すべき権利や留意すべきリスクを知っておくことが大切

 単にビッグデータ活用事例を紹介するだけであれば、通常はここで終わりです。ですが、今回注目したいのは「各商店が得るべき権利や留意すべきリスク」についてです。例えば、商店Aは商店街の入り口に位置しており、商店街に消費者を呼び込むための重要な役割を担っています。商店Aに置かれた端末との通信を通じて配信された「商店街の見取り図」によって商店Cや商店Fが繁盛したとすれば、商店Aは商店Cや商店Fへの「顧客誘導」を担っていることになります。商店Aも努力をして入り口の位置を維持しているはずですから、ビッグデータ活用の仲介や起点の役割を果たしていることに対する何らかの権利を主張できるのでは?という考え方も出てくるでしょう。    こうした権利とは逆にリスクが伴う場合もあります。消費者によっては「年齢を前提としたお勧め商品を表示されるのは気分が良くない」と感じるケースもあるかも知れません。つまり、性別/年齢/趣味といった消費者の属性を全商店一律で活用して本当に良いのか?という配慮が必要となります。それを検討しないままサービスを展開してしまうと、「勝手に私の情報を見てお勧めを表示する嫌な店」と認識されてしまうリスクがあるわけです。  

消費者視点と自社のビジネス視点の双方を常に持っておこう

一般的に、消費者からのデータ提供を受けてビッグデータ活用を行う場合には 1. 消費者にとってどのような便益があるのか?を最初に明示する 2. データ提供の可否を消費者が明示的に判断/決定できるようにする 3. どの場面でどのデータを提供するかを消費者が制御できるようにする といった点を抑えておく必要があります。一つでも欠落すると「個人の情報を勝手に利用した」という非難を浴びることになりかねません。   商店街の例で見たように、中小企業がビッグデータに関わる場合は「何らかの大きなプロジェクトに参加する」といったケースが多いと思われます。「知らないうちにビッグデータ活用の仲介や起点の役割を担っていて、消費者の非難を浴びる対象になってしまった」ということがないように、

・参加しようとしているプロジェクトは上記の3つのポイントを満たしているか?

・自社が主張すべき権利や留意すべきリスクはないか?

を事前に確かめることが非常に大切といえるでしょう。

 

・本コラムに記載された内容は各専門家の意見であり、東京商工会議所の意見を代表するものではありません。
・本コラムに掲載された内容は、執筆者より投稿された内容をそのまま掲載しており、個人の主観的な評価、時間の経過による変化、伝聞が含まれることから、東京商工会議所はその内容の完全性、正確性、安全性等いかなる保証も行いません。

執筆者

iwakami岩上 由高(いわかみ ゆたか)

株式会社ノークリサーチ シニアアナリスト

早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻卒業後、ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ベンチャー企業数社にて、ユーザ企業に対するIT活用提案の経験を積む。ノークリサーチではこうした経験を活かしたリサーチ /コンサル /講演 /執筆活動などを担当。
著書に「クラウド大全」(共著)(日経BP社)などがある。

http://www.facebook.com/yutaka.iwakami
http://twitter.com/Yuhtan

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