お役立ちコラム

“モノのインターネット”と言われる“IoT(Internet of Things)”に注目が集まっています。

総合建機メーカーのコマツが、世界各地で稼働する建設機械にGPSやセンサーを搭載して稼働状況を見える化し、修理効率の向上や盗難防止等を実現したというニュースを耳にした方も多いでしょう。
このIoTですが、日本の会社の99%を占める中小企業の日々の経営には、一体どのようなインパクトをもたらすのでしょうか?あるいは、IoTは大手企業だけのもので、中小企業には全く関係がないこと、無視しておいてもよいものなのでしょうか?

IoTとは

IoTは、クルマや工作機械、家電製品や衣服、ドアや浴槽など、身の回りにあるありとあらゆる“モノ(Things)”がインターネットにつながる概念を表す言葉です。インターネットと言えば、パソコンやスマートフォン、タブレット端末といった情報通信端末から使うのが当たり前ですが、IoTでは、情報通信端末以外の様々なモノがインターネットにつながります。コンピューターやセンサーが搭載されたモノがインターネットに接続されることで、計測したデータを送信したり、遠隔地から制御できるようになったり、自動的に最適な状態を維持するなど、より効率的に、より効果的にモノを活用し、会社の業務全体を最適化することができるようになるというものです。

IoTのリーディングカンパニーの一つである米PTC社の資料によると、IoTは次の4段階の発展・活用の仕方があるとされています。

4段階の発展・活用の仕方

1.モニタリング(可視化):機械にセンサーを付けるなどして見える化する段階
2.コントロール(制御):モニタリングしながら、遠隔地等から機械の制御を行う段階
3.最適化:モニタリングとコントロールにより機械の稼働や保守を最適化する段階
4.自律化:機械自身が自律的に状態の最適化を図る段階

“ビッグデータ”や“統計解析”“機械学習”という言葉がIoTと関連してよく登場しますが、これらは、上記3.と4.の実現に不可欠な技術です。クラウド・コンピューティングなどのICTの技術発展により、これらの技術が従来に比べて格段に利用しやすくなったことが、昨今IoTに注目が集まっている大きな理由の一つです。
しかし、これらを実現するためには相応の設備投資が必要ですし、データサイエンティストなど専門技術者の育成も課題になってきます。また、そもそも解析の対象となるデータ量が膨大な場合に特に役立つ技術であるため、大手企業は別にして、多くの中小企業が3.4.の分野に取り組むにはまだ距離を感じるのが実際です。

一方の1.2.はどうでしょうか。“可視化”や“制御”そのものは、これまでも多くの中小企業で取り組んできている分野ですから、取り立てて新しい要素がないかというと、実はそうでもありません。ICT技術の進歩は、山の頂を引っ張り上げるだけでなく、その裾野も大きく拡げています。以下に例示するように、価格が手ごろで十分な基本品質を持ったセンサー類を、手軽にインターネットで購入することができるようになっているのです。

(1)振動センサー

例えば顧客に送付する荷物の輸送中の振動を計測し、それを輸送品質の向上に結び付けたいのであれば、市販されている3〜5万円程度のデータロガー付振動センサーを購入すればすぐに実現することができます。振動センサーをドアや台車等、可動する部分につけておけば、開閉頻度や利用回数なども可視化されます。スマートフォンで無料の振動計アプリを使う方法もあります。

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(2)人感センサー

人が通過するとチャイムがなるような人感センサーは安ければ1,000円程度で購入できますが、3万円程度の人感センサーを購入すれば、感知した情報をログデータとして記録することができます。店舗や倉庫内のロケーションごとの滞在人数の計測や、店舗前の交通量、イベント出店時のおおよその立ち寄り客数なども簡単に見える化することができます。

(3)NFC(Near Field Communication)

“NFC”は、スマートフォンにも搭載されている近距離無線通信技術で、「Suica」や「おサイフケータイ」にも使われている身近な技術です。このNFCを使うと、会社の中のモノの移動が見える化されます。例えば会社で利用している備品の貸し出し管理や入退室記録などが簡単に実現できます。NFCのタグは、10枚1000円程度でいつものネットで購入することができます。

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このようなセンサー機器を利用すれば、中小企業、個人商店でも、IoTの第一ステップである“モノの可視化”に今すぐにでも取り組むことができます。今までは見えていなかったモノの動きや、把握するのをあきらめていた手間のかかる計測など、可視化の範囲を広げていくことが可能になったわけです。
可視化によりデータが得られれば、社内の業務の非効率な部分を見つけて改善施策を実施したり、業務の品質向上、生産性向上策を見つけたり、さらには、お客様向けのサービスレベルの向上にも役立てることができるようになります。単純な話ですが、先ほどの振動センサーのデータを、積極的にお客様に品質保証データとして提示(お客様に対する可視化)すれば、サービス品質を一段階グレードアップさせることができます。

大上段に構えることなく、IoTの4段階の最初の一歩である「モニタリング(可視化)」にまずは取り組み始めることが、中小企業にとってのIoTの上手な活用方法だと考えます。