お役立ちコラム

中小企業も知っておきたい「サーバレス」という考え方

ビジネス環境の変化が激しい昨今では、中小企業においても「一定期間に渡る売上や在庫のデータを集計/分析し、今後の施策を練っていく」などの取り組みが重要となってきます。これを実現するための手段は色々とありますが、近い将来は今よりももっと安価で手軽な方法が当たり前になるかも知れません。その候補となるものの1つが「サーバレス」です。今回はこの「サーバレス」という言葉を通じて、中小企業としても知っておくべきIT活用の近未来を覗いてみることにしましょう。

 

サーバは便利かも知れないけど、購入費用や管理/運用が大変

冒頭に述べたようなデータの集計/分析は表計算ツールとPCを使った手作業でも行うことが可能です。ですが、日次や週次で作業するとなるとかなり大変ですし、ミスが発生する 恐れもあります。

 

中堅企業や大企業であれば、社内に「サーバ」を導入し、販売管理システムなどを用いて自動化された集計/分析を行うでしょう。ですが、中小企業にとってサーバ導入は購入費用や管理/運用の点で敷居が高いのが実情です。実際、以下のグラフが示すように、サーバを導入する予定のある企業の割合は規模によって大きく異なってきます。

キャプチャ

 

「ちょっとした処理を外部に任せて行う」ということはできないのか?

「売上や在庫の集計/分析を行う」という目的のためだけに、高価なサーバを導入するのは大変です。一方、IT以外の分野に目を向けると「社内資料は手元のプリンタで印刷して、販促カタログは専門業者に製本を依頼する」といったように、業務の一部を必要に応じて外部に任せることが既にできています。

 

それと同じように、IT活用においても「入力データを送ると、集計や分析を実行して結果のグラフを返してくれる」といったように業務の一部を外部に任せることはできないのでしょうか?それが昨今注目を集めつつある「サーバレス」という考え方です。

 

実は「サーバレス」と似たような仕組みは既に多くの中小企業も利用しています。企業のホームページを開設できるサービスを利用している方も多いでしょう。そうしたサービスの大半は「お問い合わせ画面機能」を備えています。訪問者が画面に質問内容などを書き込んでボタンを押すと、その内容がメールになって社内に届く仕組みです。この仕組みを実現する際、企業側は社内サーバを導入する必要はありません。「お問い合わせ画面機能」という「1つの業務をこなす仕組み」がホームページ開設サービスと一緒にインターネットを通じて提供されていると捉えることができます。

 

このように「1つの業務をこなす仕組み」をインターネット経由で提供しようという考え方が「サーバレス」です。上記の例では「ホームページのお問い合わせ画面機能」でしたが、「入力データを送ると、集計や分析を実行して結果のグラフを返してくれる」という機能を提供することももちろん可能です。

 

「クラウド」と「サーバレス」は何が違うのか?

では、クラウドとは何が違うのか?と疑問に思われた方もいるかも知れません。クラウドを利用すれば、社内にサーバを購入する必要はありません。その点については「クラウド」も「サーバレス」も同じといえます。ですが、クラウドによって提供されるのは「豊富な機能を持ったアプリケーション全体」や「OSやデータベースも含めたサーバ全体」です。そうなると、利用する企業側はアプリケーションの基本操作や権限設定を習得する必要があります。社内に設置されていなくても、OSやデータベースのセキュリティ対策などにも気を配る必要が出てきます。欲しいのは「1つの業務をこなす仕組み」だけなのに、アプリケーション全体やOS/データベース全体を常に気にかけなければならないというのが今のITの現状でもあるわけです。そして、このことが中小企業にとってのIT活用負担を大きくしている要因の一つなのではないかと筆者は考えています。

 

 

一方、「サーバレス」で提供されるのは「入力データを送ると、集計や分析を実行して結果のグラフを返してくれる」といった1つの業務をこなす仕組みだけです。当然、その背後にはアプリケーションやOS/データべースといった基盤が存在しています。ですが、それは「サーバレス」を提供する側が管理/運用すべきことであって、利用する企業側が気にする必要はありません。つまり、「サーバレス」とは企業が利用したいと考える「1つの業務をこなす仕組み」をクラウドよりも細かく小さな単位で提供するものといえます。(厳密な話をすると、「サーバレス」は「利用する側がシステムを所有しない」という点で広い意味においてはクラウドの一種ということになります)

スライド1

 

「サーバレス」は非常に新しいIT活用ですが、近い将来は「PCの手作業で何とかする」や「サーバを社内に導入する」という手段だけでなく、「月に1度の売上分析の時にだけ、サーバレスを活用して結果を出力する」ということが中小企業も選択できるようになると期待されます。(提供する側のコスト面や開発/構築を担う販社/SIer側のスキルなど、課題もありますが)そうなれば、「ビジネスに役立つIT活用」がもっと身近になるはずです。

(その頃には「サーバレス」とは違う呼び名がついているかも知れません)

このようにIT活用の手法は日々進歩しています。「近い将来、ITはどう変わるのか?」を少しでも知っていれば、新しいIT活用で業務がどう変わるか?も思い描くことができます。「今まで手作業でやっていた週次/月次の売上分析が自動でできるようになる」とわかっていれば、ビジネスにおける様々な判断/決定も変わってくるはずです。つまり、新しいITの姿を知っておくことは、近い将来のビジネスに向けた重要な準備でもあるわけです。今回は少し技術的なトピックでしたが、本稿が「将来に向けた準備」の良いきっかけとなれば幸いです。

執筆者

iwakami岩上 由高(いわかみ ゆたか)

株式会社ノークリサーチ シニアアナリスト

早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻卒業後、ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ベンチャー企業数社にて、ユーザ企業に対するIT活用提案の経験を積む。ノークリサーチではこうした経験を活かしたリサーチ /コンサル /講演 /執筆活動などを担当。
著書に「クラウド大全」(共著)(日経BP社)などがある。

http://www.facebook.com/yutaka.iwakami
http://twitter.com/Yuhtan

 

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