お役立ちコラム

ビジネス価値を高める”ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)”の実践

1.ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)

皆様は、”ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)”をご存じでしょうか。
ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)”とは、あらゆるビジネスモデルを取り扱うことができることをコンセプトとして、Alexander Osterwalder氏によって考案されたフレームワーク(思考の”枠組み”)です。4つの領域と9つのブロックよって構成されています。
新規事業の立案や仮説検証に活用することで、ビジネス戦略の青写真(Blueprint)を明確にしたり、既存事業の顧客に対するビジネス価値を高める為に、ビジネスの仕組みを振り返りながら、より強固なビジネスモデルの構造へと見直すことができます。

2.なぜ、ビジネスモデルを定義する必要があるのか

顧客の「商品やサービスの価値」に対する”期待”は、外部環境が目まぐるしく変化していく不確実性の高い状況において、不安定であり変化を伴います。

大企業では、システムに蓄積された多様な情報をもとに、未来に対する傾向を予測・分析して、経営資源の投資を判断していくアプローチ等が行えますが、中小企業ではより限られた特定の情報や経営資源の組合せをもとに、顧客の「商品やサービスの価値」に対する期待を認識して、独自の魅力を打ち出すための投資判断が求められます。

その為、自社のビジネスモデルを定義して、「商品やサービスの価値」を顧客に対してどのように提供していけば良いのかを「デザイン思考」で理解を深めながら、具体的にビジネスの仕組みを最適化していく実践的なアプローチが有効と考えられます。

3.ビジネスモデルを4つの領域と9つのブロックで定義する

”ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)”の4つの領域と、9つの構成ブロックについて説明します。

(1)4つの領域

”ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)”では、「Ⅰ顧客、Ⅱ価値、Ⅲインフラ、Ⅳ資金」の4つの領域による分類と、9つの構成ブロックをもとにビジネスモデルを定義します。

Ⅰ顧客 ①顧客セグメント(CS:Customer Segment)、
③顧客との関係(CR:Customer Relation)
Ⅱ価値 ②価値提案(VP:Value Proposition)、④チャネル(CH:Channel)
Ⅲインフラ ⑥主要なリソース(KR:Key Resource)、⑦主要な活動(KA:Key Activity)、
⑧主要なパートナー(KP:Key Partner)
Ⅳ資金 ⑤収益の流れ(RS:Revenue Stream)、⑨コスト構造(CS:Cost Structure)

(2)9つの構成ブロック

9つの構成ブロックの特徴について説明します。9つの構成ブロックの①から⑨の表記は、”ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)”を作成する際の順序性を示しています。

①顧客セグメント(CS:Customer Segment 商品やサービスを提供する顧客層について定義します。年齢や性別、地域や職業等の特性を考慮しながら定義します。
②価値提案(VP:Value Proposition) 顧客に提供する商品やサービスの価値を定義します。顧客の嗜好によっては、定量的な値段や時間以外にも、ブランドや話題性等といった定性的な特性(心象に基づくイメージ等)を価値として考慮する場合があります。
③顧客との関係(CR:Customer Relation) 顧客の特性に応じて、どのように対応し、コミュニケーションによる関係性を構築するのかを定義します。
④チャネル(CH:Channel) 商品やサービスの価値を顧客にどのような手段で提供するのかを具体的に定義します。例えば、リアル店舗やWEBサイトでのEコマース、ダイレクトメールや通信販売等の手段が挙げられます。
⑤収益の流れ(RS:Revenue Stream) 商品やサービスを提供する過程で、どのようにして収益を生み出していくのかを定義します。例えば、商品の授受に伴う売り切り販売での売り上げや、継続した保守サービス等の月や年単位での課金方法等が挙げられます。
⑥主要なリソース(KR:Key Resource) 商品やサービスの価値を生み出すために特に必要となる資源を定義します。主要な経営資源(人・モノ・カネ・情報 等)を具体的に洗い出します。
⑦主要な活動(KA:Key Activity) 商品やサービスの価値を生み出すために、必要とされる主要な活動を定義します。業種・業態に沿って、活動の特性を理解しやすい粒度で項目を洗い出します。
⑧主要なパートナー(KP:Key Partner) 商品やサービスを顧客に提供する過程において、自社の事業と結びつきの深い主要なパートナーを定義します。例えば、外部に業務委託をしている委託先の企業等が挙げられます。
⑨コスト構造(CS:Cost Structure) 主要なリソースやパートナーとの活動を通じて、商品やサービスの価値を生み出すために、必要な費用(諸経費)について定義します。各費用の特性に応じて、具体的な数値に落とした場合でも、管理がし易い粒度で挙げていくと、収益との比較がしやすくなり、事業として収支状況が健全であるかを把握しやすくなります。

 

4.ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)の実践

”ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)”の作成方法について説明します。

 

ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)

 

(1)紙とペンを使用した作成の例

  • A3用紙の上部にペンで、検討したい「ビジネスモデルのタイトル」を記載します。
  • 「図1:BMCの雛型」を参考に、縦軸と横軸に9つの構成ブロックを記述できるように線を引きます。
  • 9つの構成ブロックの枠に対して、直接手書きで書き込んでも良いですが、付箋紙等を有効活用すると、後で見直しを行った際に、グループ分け等の整理がし易くなります。

(2)パソコンの表計算ソフトを使用した作成の例

  • Microsoft社のExcel等の表計算ソフトを用いて横長のA3用紙で雛型を作成します。
  • 縦軸は、各ブロック300ピクセルを目安に枠を調整してください。
  • 横軸は、タイトル行100ピクセル、各ブロック350ピクセルを目安に調整してください。
  • 9つの構成ブロックの枠に対して、図形にテキストで入力すると、情報の再利用がし易くなります。

(3)「図2:BMCの記載例(教育サービス)」の実践と解説

教育サービスのビジネスモデルを事例として取り上げて、”ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)”を作成しています。ここでは9つの構成ブロックの枠に対して、それぞれ記載をしていますが、特に注目して頂きたい箇所は「②価値提案(VP:Value Proposition)」となります。前提として、資格試験の合格を目指す受講希望者を顧客としています。

顧客に対する価値提案として、「1.試験の合格に必要な知識が短期間で習得できる事」が価値に繋がるのであれば、今までは3日間の研修コースを提供していた講習内容を2日間で実現できないのかという観点で、自社のビジネスモデルの課題を見直すことができます。

この課題を改善点として他社のビジネスモデルとの比較や分析を行い、具体的な対策について検討する機会を得ることができます。

自社の業務内容については、社外のコンサルタントよりも具体的に業務に携わる当事者が詳しく理解をしている為、自社の取り扱う既存の「商品やサービスの価値」又は、新規事業の立案や仮説検証として、ビジネスモデルとその価値を具体的に形にしていくことが、実務において有益な成果に繋がると考えます。

5.総括

事業には「創業期」「成長期」「成熟期」「衰退期」と成長のライフサイクルがあると言われています。どの企業でも経営資源には限りがありますが、事業として成長し続けていく為には、顧客にどのような価値を提供できるのかをご自身で見極めて、自社の強みとなる価値を高めていく事が、結果として他社との差別化となり、永続する事業の基礎となります。BMC作成のポイントは、4つの領域を一度に全て最適化しようと無理をすると、経営資源が枯渇してしまい、事業内容が悪化してしまうという結果に繋がります。

”ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)”のフレームワークを実践することによって、貴社の提供する商品やサービスの価値を高めて、結果として顧客満足向上への一助となれば幸いです。中小企業の経営に携わる皆様には特にお薦めしたいフレームワークです。是非、皆様も実践して成果を上げてください。

執筆者

黒石 悌(くろいし なお)黒石 悌

東京都内のIT関連企業に所属し、新規サービスの開発から運用・改善までの複数プロジェクトを歴任する。”ビジネスとITの橋渡し”を主眼としたコンサルティング実績として、通信系(営業マネジメントのWEBサイト)や金融系(WEBシステム)の開発プロジェクトとあわせて、企業における内部統制の整備や ITSMS規格、PMS規格の認証取得支援等の実績を持つ。

「お客様がビジネスの中で真に抱える問題や課題、将来的に実現したい構想」に対して、実現可能で効果の得られる施策(例:中小企業のWEB活用)について、お客様と共にビジネスをデザインすることによって、お客様の目的達成に向けた成果(ビジネス価値の向上)に貢献いたします。2016年4月より、東京 商工会議所のWeb戦略パートナーとして活動中。

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