お役立ちコラム

導入実績などのシェアデータを見る時に知っておくべきこと

Webサイトや雑誌に目を通していると、「ビジネス向けクラウドサービスNo1」などといった広告を良く目にします。こうした情報を元に自社におけるIT活用を検討されている方も多いのではないでしょうか?ですが、「どのような基準で見た場合のNo1なのか?」をしっかり把握しておかないと、自社に合わない製品やサービスを導入してしまう恐れもあります。そこで、今回は導入実績などの広告を見るときに注意すべき点について解説していきます。

 

見方を変えるとNo1の製品/サービスも変わってくる?

「ビジネス向けクラウドサービスNo1」というのは市場に占める割合が1番であるという意味です。この市場に占める割合を示す情報を「シェアデータ」を呼びます。実は、このシェアデータの基準をどう設定するか?によって「No1」がどれなのか?も変わってきます。

 

例えば、業務支援クラウドサービスを提供しているA社とB社の2016年度における導入実績が以下のようになっているケースを考えてみましょう。

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A社は月額の利用料金が3万円/社でB社の10万円/社と比べると安価です。B社は費用が高いという点もあって、導入社数はA社の1000社と比べると半分の500社になっています。

 

この場合、シェアデータの基準としては2通りが考えられます。1つ目は「導入社数」を測る「社数シェア」です。この場合はA社(1000社)の方がB社(500社)よりもシェアは高くなります。2つ目は「どれだけ売れているのか?」を測る「売上シェア」です。(年間で算出しても良いのですが、ここでは簡単のために月間での算出結果を比較します)

月間売上は

A社:3万円×1000=3000万円

B社:10万円×500=5000万円

となるので、この場合は逆にB社の方がA社よりもシェアが高いことになります。

このように、同じ2つの会社を比べた場合でも、シェアデータの基準によって「どちらがNo1か?」は変わってきます。シェアデータを見る際は「社数」と「売上」のどちらを指しているのか?を確認することが非常に大切です。

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「多くの企業に利用されていることが1番の安心材料」(※1)と考える方にとっては「社数シェア」が最も知りたい情報となるでしょう。一方で、「業績が悪化してサービスがなくなってしまっては困るので、売上金額の高いものを選びたい」(※2)と考える方にとっては「売上シェア」が重要となってくるはずです。ですが、※1の方が間違って「売上シェア」で判断する、あるいは※2の方が「社数シェア」で判断するといったことが起きると、自社に合わないサービスを選んでしまう可能性があるわけです。

 

「導入社数」の数え方にも注意が必要

シェアデータを見るときに注意しなければならないポイントは「社数シェア」と「売上シェア」の違いだけではありません。とくに気をつけなければならないのは「導入社数」をどうやって数えているのか?という点です。

 

通常は「サービスを現時点で利用している企業数」をカウントした数字が「導入社数」です。ですが、「無償の試用版を利用している場合」(※1)や「現在はやめてしまっているが、過去に利用したことがある場合」(※2)も「導入社数」に含めてカウントされているケースがあります。正確に記述するならば、※1は「導入社数***社(無償版の利用も含む)」などの表現にすべきです。※2であれば「累積導入社数***社」といったように、過去も含めた累積値であることを明示するのが適切です。ところが、正確な記述になっていない製品/サービスも一部には見受けられます。「導入社数」を元に導入可否を判断する際は「何をカウントしているのか?」を確認した方が良いでしょう。

 

また、導入社数を表記する際に「事業所」といった表現が用いられることもあります。「導入実績5000事業所」といった感じです。一般的に「事業所」といった場合には法人(会社、企業)だけでなく、個人事業主も対象となります。もちろん、これ自体は何ら問題のある表記ではありません。

 

ですが、「企業」と「個人事業主」では製品/サービスに求める機能も大きく変わってきます。例えば、企業の場合は複数の社員が利用することを想定した権限管理が必須となりますが、個人事業主の場合は認証管理(ID/パスワードによる保護)ができれば十分というケースもあるでしょう。

 

そのため、「導入実績5000事業所」といった時、「そのうちの何割が法人で、何割が個人事業主なのか?」の割合が分からないと、「企業向けサービスだと思って導入したら、実は5000事業所の大半が個人事業主であり、企業向けの機能が十分に備わっていなかった」といった結果になる可能性もあるわけです。

 

シェアデータを見るときには、頭の中を空にしてみよう

人間の脳は不足している情報を無意識に補完してしまう傾向があります。「ビジネス向けクラウドサービスNo1」という文章を見た時、日頃の業務において契約件数などの「社数」を気にしている場合は「社数シェア」、日次や週次での「売上」を気にかけている場合は「売上シェア」を表す内容であると思ってしまいやすいのです。

 

そうした無意識の補完が誤った判断を生んでしまうこともあります。「シェアデータ」を見る時には 頭の中を一旦空にして、素直に書かれている内容を読み取ることが大切です。そこで、足りないと感じる情報があった場合は製品/サービスの開発元や提供元に問い合わせてみると良いでしょう。

 

 

執筆者

iwakami岩上 由高(いわかみ ゆたか)

株式会社ノークリサーチ シニアアナリスト

早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻卒業後、ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ベンチャー企業数社にて、ユーザ企業に対するIT活用提案の経験を積む。ノークリサーチではこうした経験を活かしたリサーチ /コンサル /講演 /執筆活動などを担当。
著書に「クラウド大全」(共著)(日経BP社)などがある。

http://www.facebook.com/yutaka.iwakami
http://twitter.com/Yuhtan

 

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