お役立ちコラム

他の業種/地域のIT活用状況にも目を向けてみよう

本コラムの読者の多くは都内で会社を経営されている方々や都内の企業に勤められている方々かと思います。ですが、ビジネスの範囲はもちろん都内だけとは限りません。自社と異なる業種の企業と協業する場面もあるかも知れません。そこで今回は他の業種や地域に目を向けることの重要性について考えてみたいと思います。

 

IT活用の成果を享受するためには「ビジネスの相手を理解すること」が大切

どのようなビジネスにも他の企業との協力関係が不可欠です。例えば卸売業と小売業は納入先/仕入先という互いに切っても切れない関係にあります。製造業も素材や部品などを調達する別の製造業の存在が欠かせません。

 

こうした企業間のやりとりを円滑化しようとする取り組みは以前からありました。「サプライチェーンマネジメント」や「マーケットプレイス」といった言葉を耳にされたことのある方も多いかと思います。さらに、最近では複数の製造業の製造ラインをITによって連携し、あたかも1つの巨大な工場のような状態を作り上げる「スマート工場」といった考え方も登場してきています。

 

こうした取り組みは現時点では大企業が中心となっています。ですが、冒頭で述べたように「他の企業によってビジネスが支えられている」という状況は中小企業も同じです。そのため、ITを活用することで生産性を上げようとする場合は、他の企業のIT活用状況を理解することが非常に大切となってきます。

 

例えば、卸売業が小売業との受発注処理をFAXによる紙面からWebサイトを用いたデジタルな手法に変更したいと考えたとします。ですが、取引先の小売業の中に「ITが苦手な従業員が多いので逆に効率が落ちてしまう」「作業現場が水に濡れやすいので、IT機器は使えない」などの理由で変更できない企業が1社でも残っていると、結局はFAX紙面も継続する必要が生じてきます。最初からFAX紙面も併用する予定であれば良いのですが、Webサイトへの全面移行で得られる投資対効果を前提としていた場合には当初の計画からズレが生じてしまうことになります。

 

こうした誤算を防ぐためにも、他の企業のIT活用状況を理解しておくことが重要となってくるわけです。理解すべき企業(取引先)は自社と同じ業種とは限りませんし、他の都道府県の企業である可能性もあります。「餅は餅屋」の発想でさらに良いビジネスを目指すのであれば、幅広い業種や地域に目を向けることが大切なのです。

 

業種/地域による違いを理解することは相手との信頼関係を築く上でも有効

以下のグラフは年商500億円未満の幅広い企業を対象に、ビジネス拠点数(営業所、工場、倉庫、店舗などの数)とIT管理/運用の状況を尋ねた結果を業種別および地域別に集計したものです。

 

n1

n2

各選択肢は「拠点の数」と「インフラ(IT活用の基盤となるサーバやネットワークなどのIT資産)の管理状況」の組み合わせです。例えば、「2~5ヶ所の拠点があり、サーバやネットワークといったインフラは全拠点で統一的に管理されている」という場合には『工場や店舗が2~5ヶ所あるが、ネットワークは本社の担当者がまとめて管理/運用している』といった状態を指します。一方、「2~5ヶ所の拠点があり、サーバやネットワークといったインフラは各拠点で個別に管理されている」という場合には『工場や店舗が2~5ヶ所あり、ネットワークの管理/運用は各拠点の社員が個別に担っている』といった状態を指します。

 

業種別のグラフを見ると、流通業(運輸業)では「6ヶ所以上の拠点があり、サーバやネットワークといったインフラは全拠点で統一的に管理されている」の割合が37.5%と高い一方、サービス業では10.3%に留まっています。ですので、流通業がサービス業と共同で何らかの新規ビジネスを展開したいと考えた場合、「複数拠点でネットワークが統一管理されている」という状態が当たり前だと思ってしまうと、サービス業の協業相手にとっては負担の大きなIT投資を強いることになってしまうかも知れません。

 

地域別のグラフでも同じようなことがいえます。「拠点は1ヶ所のみである」の割合は関東地方では36.7%ですが、北陸地方では20.0%と意外と少ないことがわかります。「ウチの会社は拠点が1つしかないから、きっと協業する相手も同じだろう」と決め込んでしまうと、IT活用の基本設計を見直さなければならなくなる可能性もあるわけです。

 

このように業種や地域によって「IT管理/運用が拠点間で統一的に行われているか?」の状況は 異なることがわかります。こうした状況を把握しておけば、「**業の場合は拠点毎のIT管理が進んでいないようなので、協業に必要なシステム導入の際には手間のかからないクラウドを選ぶようにしよう」といった事前の検討が行えるようになります。また、こうした取り組みは協業する相手企業に配慮することになりますから、互いの信頼関係を深める上でも有効といえます。

 

今後ITが発展していけば、中小企業も様々な業種や地域の企業と協業する機会が増えていくと予想されます。その時に「一歩先を行く協業企業に対する配慮」ができるかどうか?はビジネスにおいても大変重要です。本稿がそうした取り組みの参考となれば幸いです。

執筆者

iwakami岩上 由高(いわかみ ゆたか)

株式会社ノークリサーチ シニアアナリスト

早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻卒業後、ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ベンチャー企業数社にて、ユーザ企業に対するIT活用提案の経験を積む。ノークリサーチではこうした経験を活かしたリサーチ /コンサル /講演 /執筆活動などを担当。
著書に「クラウド大全」(共著)(日経BP社)などがある。

http://www.facebook.com/yutaka.iwakami
http://twitter.com/Yuhtan

 

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