お役立ちコラム

簡単ツールで商圏の立地環境を調査してみよう

今回はフリーのツールを活用した、簡易な小売り・飲食店などの商圏の評価・分析方法について取り上げます。

 

店舗の商圏設定と調査

物販や飲食店舗を出店する場合、家賃などのコスト以外に昼間/夜間の候補地周辺人口や想定する潜在顧客の往来、競合店との距離などを勘案して決定されると思います。家賃や設備の使い勝手などは不動産業者との相談・交渉事項となりますが、周辺人口や競合店の立地状況などは、簡単に調査が可能です。

 

●人口データ

国や自治体で調査した人口動態データは公開されており、エクセルで加工が可能です。例えばオフィス街で飲食店を出店するような場合、一次商圏を例えば半径400m(*注1)と設定し、立地候補地周辺の町丁目ごとの昼間/夜間の人口を調べることが可能です。

*注1:日本人の標準的な歩行速度(1分=80m)として、ランチで利用する店まで片道5分程度と仮定した場合。

例として、港区における町丁目別の昼夜間人口を調べる場合の操作は、以下の手順で区のホームページを検索します。

ホーム>区政情報 > 統計データ> 人口・世帯 > 国勢調査による総合支所別・町丁目別面積、昼夜間人口等

 

図1.港区国勢調査による総合支所別・町丁目別面積、昼夜間人口一覧の表示例 (左:港区総数、右:芝地区総合支署管内分) (出典:東京都港区ホームページ)

図1.港区国勢調査による総合支所別・町丁目別面積、昼夜間人口一覧の表示例
(左:港区総数、右:芝地区総合支署管内分)
(出典:東京都港区ホームページ)

●競合店立地情報

立地場所はなるべく競合店が少なく、少しでも来店客を固定化したいものです。しかしながら、一般的に自治体などの統計データでは個店の立地情報は業種・業態の区別がなく、競合店の抽出は出来ません。この様な場合、固定電話がある個店に関しては広告媒体の情報である「iタウンページ」(*注2)を活用して調べる方法があります。

*注2:NTTが収集する電話帳掲載情報をウェブサイトで提供するサービス。

例として、目黒区に立地するカレー店舗を調べる場合の操作は、以下の手順で「iタウンページ」のホームページを検索すると19件抽出されました。

iタウンページ > グルメ・飲食 > カレー > 東京都 カレー > 目黒区 カレー

 

図2.「iタウンページ」で目黒区に立地するカレー店舗を調べた結果の表示例 (出典:東京都港区ホームページ)

図2.「iタウンページ」で目黒区に立地するカレー店舗を調べた結果の表示例
(出典:東京都港区ホームページ)

●エクセルのGIS機能による俯瞰

競合店の立地住所がわかれば、GIS(*注3)ツールで地図上にプロットすることにより、地域環境と合わせて俯瞰して評価することができ、客観的に理解することが可能となります。Excel 2013では、メニュー[挿入]を選択すると、「アドイン」の中に「Bingマップ」(図3の赤丸の箇所)が表示されています。

*注3:地理情報システム(GIS:Geographic Information System)の略。地理的な位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示することで、分析や客観的な判断を可能にする技術。従来のツールは、非常に高機能で高価なものしか存在せず、主に調査機関などでの活用となっていた。

(出典:国土地理院ホームページ掲載情報を参考に筆者が作成)

 

図3.Excel 2013の[挿入]メニュー例

図3.Excel 2013の[挿入]メニュー例

 

図4.競合店住所をエクセルで一覧表示した時の例

図4.競合店住所をエクセルで一覧表示した時の例

もし挿入メニューに「Bingマップ」が表示されていない場合は、「Office 活用 TIPS」のサイトから「Bingマップ」を取り込みます。

次に「iタウンページ」で抽出した目黒区内に立地するカレー店舗(19件)の住所を、エクセルシートにコピーし一覧表とします(図4)。

(GIS機能としては店名や業態などの情報も一括管理可能ですが、ここでは例として住所情報のみとしています。)

 

[挿入]メニューの「Bingマップ」を起動すると、図5(左)のようにエクセルシート上に「Bingマップ」が表示され、「サンプルデータを挿入」と表示されます。上部の「フィルター」アイコン(図5左の赤丸)をクリックすると図5右のようにフィルター操作パネル表示され下部に「データの選択…」ボタンが表示されます。このボタンをクリックすると「データの選択」サブウィンドウが表示されます。

 

図5.Bingマップ機能の操作・表示例 (左:Bingマップ起動画面、右:「データの選択」ボタン操作状態)

図5.Bingマップ機能の操作・表示例
(左:Bingマップ起動画面、右:「データの選択」ボタン操作状態)

 

あらかじめエクセルシート上に用意した競合店一覧(図4)のセルを「データの選択」サブウィンドウで範囲選択(例ではA3-A21セル)すると、Bingマップにエクセルの住所情報が取り込まれ、図6のように地図上に19の競合店がプロットされます。

 

図6.目黒区内に立地するカレー店の状況

図6.目黒区内に立地するカレー店の状況

GIS機能を活用して出来ること

図6によれば、東横沿線の中目黒駅~祐天寺駅は、駅周辺及び駅間に複数のカレー店が立地していますが、一方で、祐天寺駅~学芸大学駅~都立大学駅~自由が丘駅は、駅周辺には立地しているものの、駅間には店舗が立地していないことも判ります。図6の例では、地図上の店舗マーク(図9)の直径がおよそ200mなので、これをもとに駅から徒歩〇〇分のエリアなら競合店が少ないと言うことも判ってきます。同様に、道路に面した場所や公園など地域資源の周辺については、ほとんど立地していないことも見えてきます。

どの様な人に来店して貰うのか、つまり自店のサービスの強みと想定する顧客を、どのように定義するかによって、どの様な立地環境に出店すべきかも関わってきます。

また出店後も地域環境は変化します。今回の方法であれば簡単に調べられますので、年に1回程度はご自身で確認し、あらたな気づきを得て戦略を練ることも重要ですね。

執筆者

村上 出

村上 出(むらかみ いずる)

大学では、生物系のテレメトリーシステムを専攻。卒業後、工場プラントの自動制御システム・自家発/売電システムのSEとして従事。電機メーカーに転職し、マルチメディア系OS・アプリケーションシステムの設計・開発。その後、車載システムの企画・設計・開発・品質管理・市場対応など、ITS・テレマティクス製品の一連のものづくり工程を商品開発責任者として担当。自動車メーカーでの開発実状に詳しい。2009年4月に独立。東京都や神奈川県を中心に、中小企業・小規模事業者様の経営全般のご支援ならびに、国・自治体などの地域産業振興政策をサポート。近年、モノづくりBtoB企業様からも、ウェブマーケティング関連のご相談を頂き、クライアント様に合う方策をご提案・ご支援させて頂いている。また、中小企業のIoT化についても、ご相談が増加しており、最新・低コストな取組みご支援にも応じている。

お役立ちコラムの
トップへ

ページの先頭へ