お役立ちコラム

IT活用では「ITと本業の関係」をまず確認しましょう

「中小企業は大企業と比べ、IT活用に割ける予算が限られる」というのは確かに事実です。ですが、それが中小企業のIT活用を阻んでいる要因の全てではありません。実は「費用が幾らかかるか?」の前に、中小企業が必ず確認しておくべきことがあります。それは「ITと本業の関係」です。

 

IT活用を阻む主な要因は「企業のタイプ」によって異なってくる

まず始めに以下のグラフをご覧ください。これは年商5億円未満の企業を対象として「IT活用を阻害している要因」を尋ねた結果のうち、回答件数の多かった項目をプロットしたものです。

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「業績が低迷しているため、IT投資予算を確保できない」という回答が最も多く、他の2つの項目と比べて多く挙げられていることがわかります。この結果だけを見ると、「やはり中小企業は予算が限られるので、とにかく安価なIT活用手段を選ぶしかない」と思ってしまいがちです。

 

ですが、上記の結果を以下の2つの企業タイプに分けて集計してみると、ある注目すべき傾向が見えてきます。

 

タイプA: IT活用が本業に直結している企業

タイプB: IT活用が本業とは直結しない企業

 

タイプAは自社の本業にとってIT活用が不可欠となっている企業が該当します。製造業の場合には「生産管理システムを導入しており、それが無くては工場が稼動できない」といったケース、小売/サービス業の場合は「店舗管理システムを導入しており、それが無くては従業員のシフトが混乱してしまう」などといったケースが具体例となります。

 

一方、タイプBは本業がそれほどITに依存していない企業が該当します。製造業であれば「受注処理は紙面または口頭で行っており、生産管理システムの必要性を感じない」というケース、小売/サービスであれば「店舗情報の共有はFAXで事足りており、店舗管理システムなどは必要ない」などといったケースが具体例です。

 

先ほどの「「IT活用を阻害している要因」を上記の「タイプA」と「タイプB」に分けて集計した結果が以下のグラフです。

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タイプAについては冒頭に挙げた中小企業全体を対象としたグラフと同じように「業績が低迷しているため、IT投資予算を確保できない」が最も多く挙げられています。ですが、タイプBでは「期待した成果を得られるかどうかが不明確である」および「IT活用以外に優先して投資するべき領域がある」といった回答の方が多く挙げられています。

 

まず、システム化が本業にプラスになるか?を確認することが大切

実は、IT活用において「タイプA」と「タイプB」の違いを意識することは非常に大切です。

 

企業がIT活用を検討する際には、どうしても「費用が幾らかかるか?」に注目してしまいがちです。ですが、本業に寄与しないITを無理に導入しても、無駄な費用を投じるだけになってしまいます。

 

そのため、まずは「IT活用が本業にどれだけ寄与するか?」を業務の視点で考え、自社がタイプAとタイプBのどちらに該当するのか?を確認することが重要となります。例えば、製造業の場合は「受注管理をシステム化すると、納期がどれだけ短縮できるか?」などを検討することになります。小売/サービス業の場合には「店舗情報をシステムで共有すると、全体の売上はどれくらい上がるか?」などが検討項目となってきます。

 

こうした検討を行った結果、「システム化すれば本業に大いにプラスとなる」という答えが得られたとすれば、その企業は「タイプA」に該当します。この場合は目的に合致したIT活用の候補を列挙した上で、「費用が幾らかかるか?」を確認するというステップに進むことになります。

 

一方で、「システム化が本業にプラスになるかは不明」といった場合には「タイプB」に該当します。タイプBの企業にとっては「費用が幾らかかるか?」よりも、そもそも「期待した成果が得られるのか?」や「IT以外に優先すべき事柄はないか?」といった点が悩みの種ということになります。

 

タイプBの場合は、まず「現状の業務を第三者にチェックしてもらう」ことが有効です。長年、紙や手作業に慣れていると、「システム化すると、返って効率が落ちるかも知れない」と考えがちです。ですが、その判断が本当に正しいか?は自社の視点だけではなかなかわかりません。第三者のチェックを受けるためには費用もかかりますが、後々の無駄な支出を防ぐためにも「自社の本業にとってIT活用はプラスになるのか?」を入念に確認することが大切となります。その結果、「昔から慣れ親しんだ業務スタイルから脱却して、IT活用の道を踏み出すべき」という結論が得られるかも知れませんし、「現時点でシステム化を急ぐと、むしろ弊害の方が大きい」といった判断もあり得るでしょう。ですが、いずれの道を選んだとしても、「費用が幾らかかるか?」からスタートしていた頃と比べて自社の本業に合致した選択となっているはずです。

 

このように自社でIT活用が進まない要因を考える際は、まず「ITと本業の関係」を見つめ直すことから始めてみましょう。

執筆者

iwakami岩上 由高(いわかみ ゆたか)

株式会社ノークリサーチ シニアアナリスト

早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻卒業後、ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ベンチャー企業数社にて、ユーザ企業に対するIT活用提案の経験を積む。ノークリサーチではこうした経験を活かしたリサーチ /コンサル /講演 /執筆活動などを担当。
著書に「クラウド大全」(共著)(日経BP社)などがある。

http://www.facebook.com/yutaka.iwakami
http://twitter.com/Yuhtan

 

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