お役立ちコラム

「瑕疵担保責任」の考え方が変わります!

民法から「瑕疵担保責任」が削除されます!と言うと驚かれた方もおられるでしょうか。

実は2017年5月26日に参議院で改正民法が可決・成立し、1896年の制定以来、なんと120年ぶりに民法に対して本格的な見直しが行われました。

社会環境、商習慣等が常に変わっている中で、民法が120年間大きく変わってこなかったことに驚きですが、その改正民法では本当に「瑕疵担保責任」について規定されていた条文が削除されています。それでは「瑕疵担保責任」については、どうなるのでしょうか?

このことは後で述べるとして、まずは「瑕疵担保責任」について、整理したいと思います。

なお、ここはICTスクエアですので、以降では「瑕疵担保責任」の対象をシステム開発における請負契約の場合に限定して説明します。

瑕疵担保責任って?

瑕疵担保責任については、現行民法の第二章「契約」中の第九節「請負」の第六百三十四条と第六百三十五条に「請負人の担保責任」として以下のように規定されています。

 

<第六百三十四条>
仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。

2 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。

 

<第六百三十五条>
仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。

 

また、第六百三十七条では「請負人の担保責任の存続期間」として、以下の規定があります。
<第六百三十七条>
前三条の規定による瑕疵の修補又は損害賠償の請求及び契約の解除は、仕事の目的物を引き渡した時から一年以内にしなければならない。
2 仕事の目的物の引渡しを要しない場合には、前項の期間は、仕事が終了した時から起算する。

 

民法では、「瑕疵」そのものについての規定はありませんが、システム開発を請負で契約した場合、受注側は契約で定めた成果物(設計書やプログラム等)を完成させる責任を負います。この成果物の完成というのが成果物に欠陥がないことが前提となっており、何か欠陥(バグや機能の不足等)があった場合にその欠陥を「瑕疵」として扱います。
従って、システム開発を請負契約で行った場合、開発したシステムに重要な欠陥(バグや機能の不足等)があることが判明したら、そのシステムの納品から1年以内であれば発注側は無償での修正や損害賠償の請求ができます。
これが現在の「瑕疵担保責任」の考え方になります。
それでは、話を民法の改正に戻って、この「瑕疵担保責任」の考え方がどのように変わるのかを見ていきましょう。

「瑕疵」が「契約不適合」として規定

今回の改正で、上記の第六百三十四条、第六百三十五条が削除されます。
だからと言って「瑕疵担保責任」がなくなるのか、ということではありません。
改正民法の第五百六十二条で以下が規定されます。

 

<第五百六十二条>
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

 

ここで、「瑕疵」という表記が「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」という表記に変わっています。これをシステム開発の場合で考えると、今まで「瑕疵」としてバグや機能の不足などが中心に考えられてきましたが、「契約の内容に適合しない」ということでは、「契約の目的」を達成することが期待されます。その為、システムの性能や操作性にまで適合しないものの範囲が及ぶ可能性があります。実際に既に現行でもそのような判例も出ています。

 

また、改正民法の第六百三十六条において以下が規定されますので、受注側が発注側の指図が不適当(契約の内容・目的に整合しない)であると知った場合は、それを発注側にきちんと告げる責任があり、発注側の指図だからということが不適合の理由にならない可能性があります。

 

<第六百三十六条>
請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。

「納品から1年」が「知った時から1年」に!

また、現行では「瑕疵」に対する無償での修正や損害賠償の請求が納品から1年となっていますが、改正民法では第六百三十七条で以下のように変更されます。

 

<第六百三十七条>
前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
2 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。

 

この改正により、発注側が「契約との不適合」を知った時から1年以内であれば、無償での修正や損害賠償の請求等が可能となります。(ただし納品から5年以内の制限があります。)
この他、今回の改正で成果物の不適合を発注側で修正した場合や他社に修正を依頼した場合に受注側に支払の減額を請求できることや成果物が完成しなかった場合でも、成果物の一部によって発注側が利益を受けている場合は、受注側がその利益の割合に応じた報酬を請求できることなどが規定されています。

 

今回の改正民法での請負契約における「瑕疵担保責任」に関する変更点をまとめると以下となります。

「瑕疵担保責任」に関する変更点

 

今回の改正民法では200項目以上が見直されています。システム開発に限らず他の領域や、みなさんの生活そのものに影響するものも多くあります。

改正民法は2017年6月2日の公布から3年以内の施行となっていますので、2019年頃には施行されるとみられています。

施行までにどのような改正が行われるのか、法務省のホームページに以下の資料が掲載されていますので一度目を通しておくことをお勧めします。

民法より実際の契約の内容が優先されます。受注側としても発注側としても、法律の内容を理解したうえで、納得のいく契約にしたいものです。

 

・改正法の概要:http://www.moj.go.jp/content/001230132.pdf

・法律案要綱:http://www.moj.go.jp/content/001142180.pdf

・民法の一部を改正する法律案新旧対照条文:http://www.moj.go.jp/content/001227284.pdf

・法律:http://www.moj.go.jp/content/001226886.pdf

執筆者

上野上野 貢

大学を中心とした教育機関の業務・教育システムの構築、開発に長年従事。大学から中・高、専門学校、塾等の業務システム、教育システムの要件定義から運用に至るまで多数の業務支援経験を持つ。インターネットの黎明期よりWEBを利用したシステムの構築、開発や企業のeラーニングシステム導入、利用、サービス提供に関しての支援など専門的な分野で活躍している。

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