お役立ちコラム

第4次産業革命って何だ?(第1回):ビッグピクチャ(全体構造)

これから5回にわたり、最近よく耳にするようになった「第4次産業革命」とは何かを明らかにしたいと思います。第1回は、まず第4次産業革命の全体を概観します。

 

1)第4次産業革命を構成する4つのキーワード

第4次産業革命は、さまざまな新技術の集合です。それを構成するキーワードとして以下の4つが取り上げられることが多いようです。

IoT:Internet of Thingsの略。あらゆるモノがインターネットに接続される世界。

ビッグデータ:大量・多種多様・高頻度といった特徴をもつデータ。

AI:Artificial Intelligenceの略。人工的に作られた人間のような知能。(東大・松尾)

ロボット:センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する知能化した機械システム(経済産業省)

政府の「日本再興戦略2016」においても成長戦略のカギを握る第4次産業革命のキーワードとしてこの4つが選ばれています。経済産業省の「新産業構造ビジョン」では、この4つの技術により以下のようなことが可能になるとされています。

①実社会のあらゆる事業・情報がデータ化され、ネットワークを通じて自由にやりとり可能になる(IoT)

②集まった大量のデータを分析することにより、新たな価値が生まれる(ビッグデータ)

③機械が自ら学習し、人間を超える高度な判断が可能になる(人工知能(AI))

④多様かつ複雑な作業についても自動化が可能になる(ロボット)

ただ、この4つのキーワードの1つ1つは何となくわかっても、各キーワードの関係や全体像はどうなっているのかはわかりにくいという人は多いのではないでしょうか。実際は相互に密接に関連しています。

 

2)全体像の整理その1 - 経済産業省による概念整理

4つのキーワードの関係については経済産業省が下図のような概念整理を行っています。まずIoT(センサー)により取得されたデータは、通信によって集約されてビッグデータとなり、AIにより分析され、ロボット等により現実の世界にアクションという形でフィードバックされています。

 

この図は示唆に富んでいますが、まだいくつか検討の余地があるように思われます。例えば、AIはロボットの外にありますが、実際はロボットの中にセンサーやAIが搭載されることも多いです。また、ロボットのアクションからセンサーの入力にどうつながるのかもよくわかりません(図の5から1への矢印)。ロボット等の動きがセンサーの入力に関係無いことも多いです。

もう1つ気になるのは、高度な情報処理の出口がロボットのアクションになっていますが、当分はロボットではなく人間が判断して対処(アクション)する場合も多いでしょう。

 

3)全体像の整理その2 - オリジナルのコンセプト

筆者は現在下図のような概念整理を試みています。

 

 

ポイントは、以下の3点です。

①新技術だけでシステムが構築されるのではなく、これまでのシステムも併存する。

②処理(プロセス)と機械や(ビッグ)データを区別する。IoT機器やビッグデータ(という名詞)と、認識、学習、判断、制御(という動詞)をいっしょに議論するとわかりにくくなります。特に(ビッグ)データをプロセスのように取り扱うのには無理があります。

③人間の関与の有無を重視する。これまでのコンピューティングとの大きな違いは、人間の関与が無い部分が出てきていることです。特に最後の判断や制御の部分に人間の関与が無くなることには抵抗感がある人も多いと思います。

 

4)価値創造のプロセス

IoTやAIによって新しい価値が生まれるプロセスをもう少し詳しく見てみましょう。

 

上の図で、IoT機器(センサー)によって集められた(ビッグ)データは、AIの(機械)学習に使われ、その結果として知識(スマートデータ)が生成されます。そのスマートデータを使ってAIの推論や判断が行われ、場合によってはIoT機器(アクチュエータ)の制御が行われます。

一口にIoT、AIといってもその中身はいくつかのプロセスに分かれており、その一連のプロセスの結果、新しい価値が創造されていきます。効果的な価値創造のためには、こうした構造を理解することが重要です。

ロボットについても少しだけ触れておきますと、ロボットは上記の要素の中から、「センサー」、「アクチュエータ」、「AI(推論)」(または通常のソフトウェア)を1つの箱の中に入れたものと考えればよいでしょう。使うのはもちろんビッグデータではなく、スマートデータのほうです。

 

 

5)まとめ

今回のポイントを整理しておきます。

①第4次産業革命の4つの新技術は、相互に関連しています。

②価値創造に至るプロセスを理解しましょう。

③産業革命の(全体)構造を理解することにより、効果的な価値創造を行うことができます。

 

(追伸:もう1つのキーワード)

第4次産業革命がブームになる少し前のキーワードである「クラウド」は、現在、急速に普及しています。特に大量のリソースを必要とするAIにおいては、クラウドシステムが不可欠です。第4次産業革命を理解するためには、4つのキーワードに「クラウド」を加えて、5つのキーワードで分析すべきかもしれません。クラウドについては第5回のレポートで取り上げる予定です。

 

執筆者

日高 昇治(ひだか しょうじ)

 

NTTデータアイ所属、NPO法人ASPIC執行役員。

http://www.aspicjapan.org/

NTT入社。NTTデータに30年勤務し、20世紀後半から21世紀にかけて、IT分野の新技術を研究し紹介する活動を続けている。2004年から2006年まで明治大学で「情報政策論」の講師も務めた。現在は、ASPICでAIやIoTなどの新技術の研究に携わる。

 

主な著書に「手にとるようにユビキタスがわかる本」、「ICタグって何だ?」、「Bluetoothって何だ?」、「カラーコードって何だ?」、「図書館情報技術論」などがある。最近刊は「スパースモデリングって何だ?」(2017年、カットシステム)

ITコーディネータ、情報処理安全確保支援士、システム監査技術者、システムアナリスト、プロジェクトマネージャ、ITサービスマネージャ 他

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