お役立ちコラム

新規事業は、商品やツールの検討の前に、まずマーケティング戦略ありき

「新規事業を取り組もうと考えてます。新商品〇〇を通販サイト△△で販売したいのですが、どうでしょうか?」。最近、そんな相談が後を絶たない。新規事業を取り組むのは多いに結構、積極的に取り組んで頂きたいものだが、但し、こういった相談してくる企業は、既に失敗の可能性を高い場合が多い。なぜなら、その企業は、〇〇という新商品と通販サイトの△△の枝葉のツールにしか目が行っていなく「マーケティングのド素人」である可能性が高いからだ。

 

「マーケティング活動の有無」のおける新規事業成功企業と不成功企業の差

2017中小企業白書では、マーケティング活動とは「①自社の強みの把握②市場ニーズの把握③PR 活動の立案・実行④マーケティング活動の評価・検証」の4つを示している。

まず第2-3-17図をみてほしい。新規事業展開において前述のマーケティング活動をすべて行った企業(左側円図)は、そうでない企業に比べ経常利益の増加傾向にあることが明確に読み取れる。いかにマーケティング活動が業績に大きな影響を与えるのかが理解できるであろう。

 

第2-3-17図マーケティング活動の有無別に見た経常利益の傾向

「自社の強みの把握」のおける新規事業成功企業と不成功企業の差

次に、自社の強みの把握方法について見てみる(第2-3-19 図)。同図を見ると、全体では、「社内での議論による自社の強みの洗い出し」が最も多くなっており、新事業展開に成功した企業でも、成功していない企業においても大きな違いは見てとれない。一方、成功した企業と成功していない企業の違いを見ると、「他社との差別化に向けた分析」においては、成功した企業で54.6%であるのに対して、成功していない企業では49.5%となっている。また、「販売データ、口コミ等に基づく分析」においては、成功した企業で40.5%であるのに対して、成功していない企業では34.3%となっている。成功している企業においては、自社内だけの分析にとどまらず、競合他社との違いを分析している傾向にあることや、外部から見た自社の評価等を通じて自社の強みをより鋭く分析しているのが読み取れる。

 

第2-3-19図新規事業展開の成否別に見た、自社の強みの把握方法

「市場ニーズの把握」のおける新規事業成功企業と不成功企業の差

ここで、自社の強みの具体的な内容について見てみる(第2-3-20 図)。同図を見ると、「顧客の要望に応じた柔軟な製品・サービスの生産・提供」は、新事業展開の成否によらず、強みと感じている企業が多いことが分かる。他方で、「市場ニーズの把握力」や「市場ニーズを反映した製品・サービスの開発力」といった強みは、新事業展開に成功した企業と成功していない企業で差が生じている。「市場のニーズを的確に把握」できるような取組を行うことが、新事業展開の成功に影響しているようだ。

 

第2-3-20図新事業展開の成否別に見た、自社の強み

「PR 活動の立案・実行」のおける新規事業成功企業と不成功企業の差

続いて、情報戦略の具体的な取組について見ていく。第2-3-29 図は、消費者に向けた自社製品・サービスのPR 活動の取組状況について新事業展開の成否別に見たものであるが、同図を見ると、新事業展開に成功している企業も、成功してない企業も「自社WEB サイトによる PR 強化」「インターネットを活用した販路拡大」「店頭における販促活動の強化」の順じて高い傾向にある。しかしながら、成功している企業は、成功してない企業に比べ総じて高い傾向にあるのに加え「販売データやITを活用した効率的・効果的なPRの実施」が高く、成功してない企業は、「特に PR 活動を行っていない」も23.2%となっている。情報戦略の立案とその実行力において大きな差が出ていることがわかる

 

第2-3-29図新事業展開の成否別に見た、一般消費者に向けたPR活動

「マーケティング活動の評価・検証」のおける新規事業成功企業と不成功企業の差

企業の事業活動においては実施した取組の効果を評価・検証し、成功要因や失敗理由を明らかにして、次の事業活動に活かしていくことが重要となる。マーケティング活動の評価・検証に係る取組状況について、新事業展開の成否別に分析してみると、成功した企業は半数近くがマーケティング活動の評価・検証に係る取組を行っているのに対して、成功していない企業は 4割程度の実施状況となっている(第2-3-31 図)。

 

第2-3-31図新事業展開の成否別に見た、マーケティング活動の評価検証に係る取り組み状況

マーケティング活動が新規事業戦略の成功と不成功の分かれ道となる

「自社の強みの把握、市場ニーズの把握、PR 活動の立案・実行、マーケティング活動の評価・検証」の4つのマーケティング活動の有無が新規事業展開の成否にどういった影響を及ぼすのかを見てきた。「市場ニーズ変化を把握しつつ、自社の強みを活かし、積極的PRし、その結果を次に活かす」。一見当たり前のマーケティングの基本プロセスであるが、その取り組みの有無によって新規事業の成功と不成功が決まるといっても過言ではないだろう。しかしながら、そもそもそういった基本的プロセスを無視して、「〇〇はモノが良いから売れるにちがいない。△△の通販サイトは評判いいから何でも売れるだろう」という安直な考え方で新規事業を取り組んで失敗してしまう企業が後を絶たないのが実態なのである。

もし幾つも新規事業の立ち上げた経験者やマーケティング業務や営業経験のベテランであれば、そういった相談の仕方をしてこない。もし彼らならば「ウチはこういった強みがあって、こういう市場のこういったニーズに対して、こういう風にPRしようと考えています。今テストしているのですが今の所こういった結果です。何か改善すべき点はありますかね?」といってくる。基本プロセスが頭に入っているので、当然、改善(=成功)も早いということになる。

 

執筆者

野村忠史野村 忠史(のむら ただし)

ナインソーツコンサルティング株式会社 代表

1971年生まれ。販売力強化コンサルタント。中小企業診断士。

営業会社入社後、最下位スタートであったが、独自ノウハウを構築し、1年後に200人のトップに。さらに80人中3人選出の最優秀賞に、新人2人を受賞させる。

その後、13年間あらゆる業種業態で一貫して営業職と勤め、常に上位10%にキープ。

経営コンサルとして独立後は、あらゆる業種業態に再現できる「売れる仕組み」を独自に考案し、2014年ナインソーツコンサルティング(株)を設立。

年間100件以上のコンサルとセミナーを通して、全国各地の中小企業の販路拡大・販売力強化支援を行っている。

お役立ちコラムの
トップへ

ページの先頭へ