お役立ちコラム

第4次産業革命って何だ?(第2回):IoTのビジネスモデル

今回は、第4次産業革命の新技術の中からIoTをとりあげます。IoTの概念はわかるがどういうビジネスが展開されるのかがわからないという話をよく聞きます。IoTとは何かという「今さら聞けない」話から始めて、IoTを取り扱ったビジネスの構造について考えてみたいと思います。

 

0)前回の復習

(前回のコラムはこちら

前回は、第4次産業革命の全体構造を下図のように整理しました。

 

今回取り上げるIoTはこの図の網掛けの部分になります。

 

1)IoTの定義

まず、IoTの定義から始めましょう。

IoTとはInternet of Thingsの略で、「モノのインターネット」と呼ばれていることはご存知の方も多いと思います。Wikipediaでは、「様々な「モノ(物)」がインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組み」と定義しています。

IoTという言葉は、2年前くらいから流行っていますが、意外と古くからあり、1999年にMITのケビン・アシュトンが使ったのが最初とされています。(当時は、ICタグによる商品管理システムのことを指していたようですが。)

実はすでに日本の法律の中にIoTを定義しているものがあります。

*官民データ活用推進基本法第2条第3項

「この法律において「インターネット・オブ・シングス活用関連技術」とは、インターネットに多様かつ多数の物が接続されて、それらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の活用に関する技術であって、当該情報の活用による付加価値の創出によって、事業者の経営の能率及び生産性の向上、新たな事業の創出並びに就業の機会の増大をもたらし、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与するものをいう。」

*特定通信・放送開発事業実施円滑化法附則第5条第2項

「インターネット・オブ・シングスの実現(インターネットに多様かつ多数の物が接続され、及びそれらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の円滑な流通が国民生活及び経済活動の基盤となる社会の実現をいう。)」

いずれもIoTが何かにとどまらず、それによってどんな効果が期待できるかまで説明しています。

本レポートでは、IoTそのものというより、「IoTシステム」というものを定義しておこうと思います。

 

 

IoTシステムとは、インターネットにセンサーやアクチュエータと呼ばれる

様々な機器が接続されるシステムである。

 

ポイントは、

①IoTはシステムの一部としてとらえる

IoTはそれだけで完結するものではなく、システムの一部にIoT(機器)が組み込まれるというとらえ方のほうがわかりやすいのではないでしょうか。ここでは、IoT(機器)を使ったシステムを「IoTシステム」と呼んでおきます。

②接続される機器には、センサーとアクチュエータとがある

多くの文献で「IoTではセンサーが・・・」と定義していますが、IoTでは「センサー」だけでなく、「アクチュエータ」も接続されるということが重要です。アクチュエータとは、扇風機のようにモータのついた機器をイメージするといいでしょう。アクチュエータは、人間に危害を加えたり、損害を与えたりする可能性があり、社会に与える影響は大きいと言えます。

③パソコンやスマートフォン(によるデータの入力)はIoTに含めない

パソコンやスマートフォンがインターネットに接続されるのは、IoTという言葉が流行る前からの話で、これをIoTに含めてしまうと話がややこしくなります。また、パソコンやスマートフォンは人が操作するものであるのに対し、IoT機器は自動で動くものという大きな違いがあります。

なお、スマートフォン等には各種のセンサーが搭載されていますが、それは(入力端末ではなく)センサーの話として整理したほうがわかりやすいと思います。

 

2)IoTの特徴・本質

IoTの本質は、やはり「自動化」にあると思います。これまで人間が手作業でやっていたことを機械が自動でやってくれる、という世界が実現されるのです。自動化には、センサーとアクチュエータに対応して、「自動認識」と「自動制御」とがあります。

 

①自動認識 - 情報の自動収集

これまでのように、キーボードやマウスや指を使って人間がデータを入力していたのと違い、IoTではセンサーが自動で情報を収集します。人間が意識しないところで情報が集められているとも言えます。

②自動制御 - 操作の自動化

IoTでは動力のあるモノ(アクチュエータ)に指示を与えて、自動で動かすこともあります。車の自動運転も自動制御の例です。

③無人化

自動化を突きつめると人間が全く介在しないシステムも可能になります。センサーとアクチュエータが会話をしながら仕事をするようなイメージです。機械どうしの会話の仕組みはM2M(Machine to Machine:エムツーエムと読む)と呼ばれています。

 

3)IoTシステムの構造

次に、IoTを使ったシステム(IoTシステム)の構造を見てみましょう。

これまでの(クラウド)システムを単純化して描くと以下のようになります。

 

これに対して、IoTの仕組みは以下のようになります。

 

上記の2つの図を合成すると「IoTシステム」の構造図になります。

 

IoTシステムでは、4つの要素(サーバ、端末、センサー、アクチュエータ)の間を情報が行きかうことになります。

 

 

4)IoTサービス

IoTシステムの機能をサービスとして提供するのが「IoTサービス」です。IoTではその定義から、さまざまな仕組みがインターネット上で実現されます。例えば、センサーが取得したデータは、インターネット上のクラウドサーバに集められます。したがって、ユーザはネットワーク経由でサービスの提供を受けることになると考えられます。

ネットワーク経由で提供されるサービスは「クラウドサービス」と呼ばれます。つまり、IoTサービスはクラウドサービスの一種なのです。

 

<具体例>

総務省では、「IoTサービス創出支援事業」においてIoTのプロジェクトを紹介しています。IoTサービスの具体例としてはこの事業が参考になります。

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000178.html

5)IoTビジネスのステークホルダー

次にIoTサービスを提供するビジネスのステークホルダー(関係者)を整理しておきましょう。(小説で最初に登場人物を整理するようなものです。)

 

①ユーザ

IoTを使ったクラウドサービスにも2種類のユーザが存在します。企業と消費者です。

②クラウド事業者

クラウド事業者にはSaaS、PaaS、IaaSなど、さまざまなサービスモデルがありますが、ここでは、サーバ(サービスに必要なハード、ソフト)を提供する事業者としておきます。

③IoT事業者

IoT事業者は、新しい事業者であり、まだ明確なモデルは確立していません。例えば、IoT機器(センサーやアクチュエータ)を販売(またはリース)する事業者が考えられます。当然、IoT機器の設置工事、機器の保守などのビジネスもあります。

④システムインテグレータ(SIer)

さまざまな機能を1つに統合してシステムとして動作させるためには、システムインテグレータが必要となることが多いと考えられます。クラウド事業者などがシステムインテグレータを兼ねることもあります。

 

6)IoTビジネスのサプライチェーン

上記のステークホルダーが登場するIoTビジネスのサプライチェーンは、以下の4つ

 

 

①クラウド事業者とIoT事業者とが個別にユーザにサービスを提供する

システム全体はユーザが企画・管理することになります。情報システム部門がしっかりしている実力のあるユーザなどの場合はこういうモデルが考えられます。

②SIerが統合的にユーザにサービスを提供する

接続される機器の種類が増える等、システムが複雑になればなるほど、ユーザのみではシステムの企画・導入が難しくなるため、システムインテグレータの必要性が高まります。

③IoT事業者が統合的にユーザにサービスを提供する

実力のあるIoT事業者がシステム全体を提供することも考えられます。特に直接IoT機器をユーザに販売するIoT事業者はユーザとの関係が深いので、元請的にサービスを提供することもありえます。

④クラウド事業者が統合的にユーザにサービスを提供する

逆に、クラウド事業者がシステム全体を提供することもあります。ユーザが契約している既存のクラウド事業者がIoT事業者と提携して、システムを構築する場合などです。

 

7)IoTビジネスの可能性

IoTシステムは接続する機器の数や種類も多く、複雑なシステムです。見方を変えれば、インターネットに何をつなぐかは無限の可能性を持っているとも言えます。IoTを使っていかに付加価値の高いシステムを構築するかはアイデア次第です。

最近では、家電製品ばかりでなく歯ブラシやコンタクトレンズにまでセンサーを仕込んだ例があります。筆者自身も図書館の本棚にカメラを仕込んで本の位置をリアルタイム把握するシステムを作ったことがあります。また、農業分野では自走式のトラクターなどの活用も始まっています。

ビジネスモデルとしても、企業間のアライアンスやオープンイノベーションが盛んになり、複数の企業が共同で上記のようなシステムを作り上げることも増えてくると思われます。

 

まとめ

①IoTはセンサーやアクチュエータがインターネットに接続される仕組みである。

②IoTの本質は人間が介在しない「自動認識」「自動制御」などの自動化にある。

③IoTはネットワークを介して(クラウド)サービスとして提供される。

④IoTビジネスは、ステークホルダーも多く、サプライチェーンも複雑になってくる。

⑤IoTはアイデア次第で大きな付加価値を生む可能性があり、コラボレーションによるビジネスチャンスも広がってくる。

 

次回のテーマは、AI(人工知能)です。今回とりあげたIoTによって集められた(ビッグ)データを使って新しい価値を生み出すサービスについて検討します。

執筆者

日高 昇治(ひだか しょうじ)

 

NTTデータアイ所属、NPO法人ASPIC執行役員。

http://www.aspicjapan.org/

NTT入社。NTTデータに30年勤務し、20世紀後半から21世紀にかけて、IT分野の新技術を研究し紹介する活動を続けている。2004年から2006年まで明治大学で「情報政策論」の講師も務めた。現在は、ASPICでAIやIoTなどの新技術の研究に携わる。

 

主な著書に「手にとるようにユビキタスがわかる本」、「ICタグって何だ?」、「Bluetoothって何だ?」、「カラーコードって何だ?」、「図書館情報技術論」などがある。最近刊は「スパースモデリングって何だ?」(2017年、カットシステム)

ITコーディネータ、情報処理安全確保支援士、システム監査技術者、システムアナリスト、プロジェクトマネージャ、ITサービスマネージャ 他

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