お役立ちコラム

中小零細企業のIT投資の実態と構造的な問題点

「IT?補助金?ウチには関係ないですよ…」「どうせ私(社長)も、従業員もわからないし…」とある中小零細企業とのちょっとしたやり取りである。

 

2017年からスタートした「IT導入補助金」。今年は昨年に比べ、政策予算が約5倍増やされ、今後の生産性向上施策のなかでの、主力の一つになるのではないかといわれている。

 

しかし、インバウンド対応や観光立国化で、IT化を急がざるを得ない中小零細企業のための施策であるものの、浸透するには相当の時間を要するものと筆者はみている。なぜならばIT感度の高い企業であれば、想定される数十万規模のIT投資は既に行っており、これから拾い上げる補助事業者は、むしろIT感度の低い企業が大半である可能性が高いからだ。今回は「中小零細企業のIT投資の実態と構造的な問題点」について触れたいと思う。

IT投資のボトルネック

そもそもIT投資のボトルネックとは、いったい何だろうか?それに関して興味深いデータがある。中小企業白書2008年の第2-3-31図は、大企業・中小企業がIT投資やITの活用における課題やボトルネックとして考えていることを示したものであるが、これによると、「自社に適したIT人材が不足している」ことや、「IT関係の設備投資にあてる初期投資コストの負担」といった点が課題として挙げられている。これらは大企業か中小企業かを問わず共通の課題として認識されている。また、大企業よりも中小企業の方が多くの項目で課題と認識している企業の割合が低いが、これは、大企業と比べると中小企業のIT活用への問題意識が弱いことを反映している。

 

IT投資やITの活用における課題

第2-3-31図 IT投資やITの活用における課題

IT人材の確保・育成における課題

次に、IT人材の充足度と効果をみてみる。第2-3-35図はITを活用している企業におけるIT人材の充足度を示したものであるが、これによると、IT人材が「十分に確保されている」企業は、従業員規模にかかわらず1割に満たず、「やや不足している」、「とても不足している」企業が多くなっている。また「外注を活用すること等から、自社にIT人材は必要ない」としている企業が、従業員20名以下の企業では16%、従業員100名以下の企業では1割程度存在している。つまり、そもそも中小企業では、ITに対する問題意識が低いため、それを有効活用するIT人材が不足しているということが考えられる。

 

IT人材の充足度~IT人材の充足度は低い

第2-3-35図 IT人材の充足度~IT人材の充足度は低い

 

更に、第2-3-36図のIT人材の充足度とIT活用の効果の関係を見ると、IT人材が確保されている企業の方が、IT活用による効果が得られている傾向が見られることから、IT人材の確保がITの有効活用にとって必要であると言えよう。

 

IT人材の充足度と、IT活用の効果 ~IT人材の充足度が高い企業ほど、IT活用の効果を実感

第2-3-36図 IT人材の充足度と、IT活用の効果 ~IT人材の充足度が高い企業ほど、IT活用の効果を実感

IT人材確保のための取組

中小企業におけるITの有効活用のためには、IT人材を外部から確保することのほか、自社の従業員のITの活用能力を向上させることが必要である。第2-3-39図は、大企業と中小企業が従業員のIT能力の向上のために取り組んでいることを確認したものであるが、これについても中小企業では「特に行っていない」割合が高くなっている。「社外のIT研修等への派遣」、「社内でのIT研修や講習会の実施」も大企業に比べて低い割合にとどまっており、人材のIT教育を行う余裕に乏しい実態がうかがえる。しかし、第2-3-40図の通りIT人材の確保のための取組及び従業員のIT能力向上のための取組と、IT活用の効果との関係を見ると、いずれも「特に行っていない」企業では効果が得られにくい傾向が見られており、IT人材の確保や従業員のIT教育に対する取組が望まれる。

 

従業員のIT能力向上のための取組

第2-3-39図 従業員のIT能力向上のための取組

 

IT人材確保・IT能力向上のための取組と、IT活用の効果

第2-3-40図 IT人材確保・IT能力向上のための取組と、IT活用の効果

各支援機関、IT事業者、コンサルタントが連携しやすい基盤づくりが必須

上記にて、中小企業に「①ITに対する問題認識の低さ→②IT人材の不足&IT人材への育成不足→③ITの有効活用ができない」という一連の流れで問題を見てきた。

 

つまり根本的には、「①ITに対する問題認識の低さ」を解決しなければ、「③ITの有効活用ができない」、そしてそれが解決できなければ結果的には、生産性も付加価値を高めることができないというロジックになってしまう。
ではどうしたらこの「問題認識を高める」ことができるのだろうか?ここはなかなか難しく一筋縄ではいかない。今般の「IT導入補助金」では、IT事業者等が中心となって中小零細企業の「現状分析からその後の効果測定(報告義務)を支援すること」を前提としているが、一方で「正直、少額案件に対してそこまで手間をかけられないし、そこまで提案できる社員は殆どいない」というIT事業者からの声もよく聞く。つまり彼らからみれば「労多くして、益少なし」という感覚になってしまうのであろう。
こういった中小企業の実態を見ると筆者としても、IT事業者に「①分析し問題認識を高める②使えるように教育する③効果測定してエラーがあれば改善、効果があれば更に発展させる」というこれら全てをIT事業者に負担させるのは、かなり無理があると思っている。むしろこれら一連の支援の流れを「各支援機関、IT事業者、コンサルタント」が連携しやすい基盤づくりがまず先だと感じている。まだまだ始まったばかりの中小零細企業向けのIT投資促進施策。今後の動向に注目したい。

執筆者

野村忠史野村 忠史(のむら ただし)

ナインソーツコンサルティング株式会社 代表

1971年生まれ。販売力強化コンサルタント。中小企業診断士。

営業会社入社後、最下位スタートであったが、独自ノウハウを構築し、1年後に200人のトップに。さらに80人中3人選出の最優秀賞に、新人2人を受賞させる。

その後、13年間あらゆる業種業態で一貫して営業職と勤め、常に上位10%にキープ。

経営コンサルとして独立後は、あらゆる業種業態に再現できる「売れる仕組み」を独自に考案し、2014年ナインソーツコンサルティング(株)を設立。

年間100件以上のコンサルとセミナーを通して、全国各地の中小企業の販路拡大・販売力強化支援を行っている。

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