お役立ちコラム

第4次産業革命って何だ?(第5回):すべてをつなぐクラウド

第4次産業革命レポートの最終回は、第4次産業革命とクラウド(コンピューティング)の関係について考察します。

クラウドは第4次産業革命が話題になる少し前に急速に普及してきた技術(またはスキーム)ですが、第4次産業革命の各技術をつなぐインフラ的な技術でもあります。

 

1)クラウドの見分け方

自社のサーバをどこに置くかで、システムの構成は変わります。下の図で「クラウド」と呼べるのはどこまででしょうか。またどれが「オンプレミス(自社運用)」でしょうか。

①部屋の中にサーバがある

②自社ビルのサーバ室にサーバがある

③自社のデータセンターにサーバがある

④外部のデータセンターにサーバがある(ただし、自社のみで使用)

⑤インターネットのどこかにサーバがある

 

クラウドかそうでないかの区別をするための観点としては、以下のものがあります。

・サーバがLAN上にあるか、インターネット上にあるか

・サーバが自社の施設内にあるか、他社の施設内にあるか

・(他社の施設内の場合)特定の場所か、不特定の場所か

・サーバは、占有か、共有か

これらの観点から前の図のシステム構成を分類すると以下の表のようになります。

クラウドの語源は、ネットワーク構成図でインターネットを雲(クラウド)のような形で描くことが多かったためであることを考えれば、インターネット上にサーバがないものは「クラウド」と呼べないでしょう。

一番のポイントは「占有」か「共有」か、という観点でしょう。コストメリットは共有のほうが大きいことは言うまでもありません。

世の中での使われ方を整理すると、①、②、③は「オンプレミス」、⑤が「狭義のクラウド」(パブリック・クラウド)、③、④、⑤が「広義のクラウド」になろうかと思います。

 

2)代表的な定義例

ここで代表的なクラウドの定義を見てみましょう。

 

NIST(アメリカ国立標準技術研究所)の定義

本家のアメリカでは、以下のNISTの定義が参照されることが多いようです。

“Cloud computing is a model for enabling ubiquitous, convenient, on-demand network access to a shared pool of configurable computing resources (e.g., networks, servers, storage, applications, and services) that can be rapidly provisioned and released with minimal management effort or service provider interaction.”

https://csrc.nist.gov/publications/detail/sp/800-145/final

やはり、shared(共有)という観点が入っています。

 

法律上の定義

官民データ活用推進基本法は、「クラウド・コンピューティング・サービス関連技術とは、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)を他人の情報処理の用に供するサービスに関する技術をいう。」と定義しています(第2条第4項)。

 

ASPICの定義

ASPIC(特定非営利活動法人ASP・SaaS・IoT クラウド コンソーシアム)では、クラウド(コンピューティング)を「特定及び不特定ユーザーが必要とするシステム機能を、ネットワークを通じて提供するサービス。あるいは、そうしたサービスを提供するビジネスモデルのこと」と定義しています。

 

本レポートでの定義

本レポートでは、クラウドをユーザの視点から「専門業者のコンピューティング・リソース(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク)を、インターネット経由で、共同利用するシステム方式」と定義しておきます。

 

2.第4次産業革命とクラウド

 

それでは本題に入りましょう。クラウドは第4次産業革命において重要な役割を果たすことになります。IoT、ビッグデータ、AIの3つをとりあげ、それぞれがクラウドとどういう関係にあるのかを考えてみましょう。

 

1)IoTとクラウド ~ データの集約と機器の制御

IoTシステムは文字通りインターネットに機器をつなぐシステムであり、センサー機器からのデータは当然インターネット上のサーバ(すなわちクラウド上のサーバ)に集約されることになります。また、クラウド上のサーバからの指示に基づき、アクチュエータを制御することもあります。

 

2)ビッグデータとクラウド

 

高性能・大容量の資産を借りる

SNSやIoTなどから生み出されるビッグデータは、これまでのデータベース技術では処理できないような巨大なデータ群です。その分析や管理のためには、超高速のコンピュータや巨大なストレージが必要となります。こうした高価な資産を各企業が所有するのはコストがかかりすぎます。したがって、ビッグデータを扱うシステムは、クラウド事業者の資産の一部を借りるという選択肢が現実的です。

 

 

3)AIとクラウド

 

AIの学習用データを集める

AIの学習には大量のデータが必要となります。このビッグデータを集めるには、クラウド上のサーバに自然と集まるしくみがあると楽です。クラウド上のオンラインショッピングのサイトに消費者の購買データが集まったり、将棋サイトに棋譜が集まるような話です。

 

AIネットワークの実現

AIとクラウドとの関係において、もう1つ重要なのは、「AIネットワーク」です。AIは単独で動作するだけでなく、複数のAIがネットワークを組んで機能するようになってきています。サーバ内だけでなく、外部のサーバ上のAIとの連携も始まっています。ネットワーク上でAIが連携するには、AIがクラウド上のサービスとして提供されていることが前提になります。

これは、すべてのAIを自社で開発するのではなく、他社が開発したAIをAPI経由等でうまく使うことにより、効率的なエコシステムを組み上げるという話でもあります。

 

量子コンピュータもクラウドで使う

近年、AIを進化させると言われている量子コンピュータの開発競争が激化していますが、量子コンピュータのような高額のマシンは、自社で購入するよりサービスとして提供を受けるほうが多くなると考えられます。すでに量子コンピュータのクラウドサービスも提供されるようになっています。

*NTTの量子コンピュータ・クラウド

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23685870Q7A121C1X30000/

*IBMの量子コンピュータ・クラウド

https://www.ibm.com/blogs/think/jp-ja/ibmq-future-with-quantum-computer/

 

4)すべてをつなぐクラウド

このように、IoTの分野においても、ビッグデータの分野においても、AIの分野においても、クラウドはますます重要な役目を果たすようになります。クラウドは、すべての技術をつなぐためのインフラ技術と言えます。

 

3.第4次産業革命によるクラウドの急速な普及

 

第4次産業革命によりクラウドの市場はますます拡大すると考えられます。世界のクラウド市場の規模は2020年には年間3,047億ドルに成長すると予測されています(平成30年度版「情報通信白書」)。

 

 

日本のクラウド市場も、2020年度には3兆円を超える市場となることが見込まれています(日経コンピュータ、2017.1)。

もちろん、クラウドのセキュリティの不安が残ると普及が阻害されますが、近年、クラウド事業者の努力により、クラウドの安全性は高まってきています。日本国内においても安心安全のクラウドサービスを認定する「情報開示認定制度」などが整備されてきています。(http://www.cloud-nintei.org/

 

おわりに

 

昨年11月から5回に渡り、第4次産業革命とは何かというテーマで、このコラムを担当させていただきました。現在は第4次産業革命の真っただ中にあり、日々新しい技術やビジネスモデルが誕生しているため、ここに書いたことはすぐに古くなると考えられます。今年は、そもそも第4次産業革命という言葉に代わって、「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉が流行るかもしれません。読者の皆様にも常に新しい情報を確認されることをお願いします。