お役立ちコラム

初の通年公募体制!生産性革命推進事業に係る補助金を活用しよう

中小企業の生産性向上等への取り組みを支援する補助金制度である「ものづくり補助金」・「IT補助金」・「持続化補助金」の3つの補助金制度はみなさんご存知でしょうか?
人手不足等の構造変化に加え、働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入など複数年にわたって中小企業の生産性向上を継続的に支援することを目的とし、中小企業の制度変更への対応や生産性向上の取組状況に応じて、設備投資、IT導入、販路開拓等の支援を一体的かつ機動的に実施するものとされています。

以前はそれぞれ完全に独立した補助金制度でしたが、昨年からは予算が一体化され、3補助金を一体的に運用する体制へと変更されました。さらに本年度(令和2年度)においては、これまでは単年度での公募体制となっていたため、公募回数は多いものでも数回程度、年度前半での公募〜採択から年度内に事業完了という流れでしたが、本年度から向こう3年間の実施が確定し、年度にとらわれず通年での公募が行われることになりました。
この改正により、公募のタイミング等で補助金利用が難しかったケースでも活用が容易になるだけでなく、向こう数年のスケジュールが明示されたことにより、自社で検討している設備投資等の時期から逆算して計画的に補助金を活用していく取り組みも考えられるようになりました。
また、当該事業を通じて、積極的な賃上げや被用者保険の任意適用に取り組むなど賃上げに取り組む事業者は優先的に支援されるため、現在これらの取り組みを検討している事業者は相対的に有利になります。※事業計画期間において、「給与支給総額が平均年率1.5%以上向上」、「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」を満たすこと等を申請要件とします。(持続化補助金及びIT導入補助金の一部事業者は加点要件)

さらに、今般の新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受け、これら3補助金では「サプライチェーンの毀損等に対応するための設備投資・販路開拓や、事業継続力強化に資するテレワークツールの導入などに取り組む事業者に対し、加点措置等を講じます」(出典:中小企業生産性革命推進事業webサイト https://seisansei.smrj.go.jp )とされており、今後必要となるであろう新型コロナウィルスに起因するビジネス環境の変化に対応する取り組みに対しては採択率が高まることが予想されます。
上記の文にも述べられている通り、テレワークの導入をはじめとした企業のデジタル化・IT化はこれらの加点措置にもマッチするものです。

今回は、ICTスクエアをご覧いただいている方の興味関心に沿うであろうIT関連の設備投資やツール導入にフォーカスした3補助金の活用方法について説明いたします。

各補助金の位置付け

「ものづくり補助金」・「IT補助金」・「持続化補助金」では、いずれもIT投資を可能としていますが、補助額や補助率、補助対象となる分野等がそれぞれに異なっています。
詳しくは下表をご参照いただくとして、それぞれの位置付けを一言で言い表すと、
持続化補助金:これまでITへの投資を行ったことがない事業者の「初めてのIT利活用」のためのツール導入等に補助を行う(パソコン等汎用的なハードウェアは対象外)
IT補助金:初歩的なIT導入を行った事業者が一歩進んだIT投資を行う際に活用できる補助金(パッケージ化されたソフトウェアの導入が対象)
ものづくり補助金:事業者の新サービス開発等に係るITを含んだ設備投資に対して補助を行う(システムのスクラッチ開発等も対象)
となります。
補助額についても、前者から後者へと額が拡大し、持続化補助金の75万円(補助率2/3)からものづくり補助金の1,000万円(小規模事業の場合補助率2/3)とかなり幅があります。自社のI T投資の規模やレベルに応じて適切な補助金制度を活用することが重要です。

 

持続化補助金 IT補助金 ものづくり補助金
概要 小規模事業者等が、地域の商工会または商工会議所の助言等を受けて経営計画を作成し、その計画に沿って地道な販路開拓等に取り組む費用の2/3を補助 製品・サービスの生産・提供などを行なっている中小企業・小規模事業者等が生産性向上のため業務プロセス改善・効率化に寄与するITツールを導入する費用の一部を補助 中小企業者等が行う「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセ ス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援
補助額 50万円 A類型30万円〜150万円 B類型 150〜450万円 100万円〜1,000万円
補助率 2/3 1/2 中小企業者 1/2、小規模企業者・小規模事業者 2/3
対象事業者 常時使用する従業員の数 5名以下(商業・サービス業) 20名以下(宿泊業・娯楽業・製造業その他) 資本金または出資総額3億円以下 または常時使用する従業員の数300名以下 資本金5,000万円〜3億円/従業員数50名〜900名(業種により異なる)
補助対象経費 機械装置等費・広報費・展示会等出展費・旅費・開発費・資料購入費・ 雑役務費・借料・専門家謝金・専門家旅費・設備処分費・委託費・外注費 IT導入支援事業者によりあらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費(ソフトウェア費・導入関連費) 複数のソフトウェア 機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費
応募方法 郵送またはJグランツによる電子申請 J-グランツによる 電子申請のみ J-グランツによる 電子申請のみ

3補助金のIT投資への方向性

前述の通り、3補助金それぞれにIT投資への利活用が可能な仕組みとなっていますが、各補助金ごとのIT投資を行う際の方向性とポイントを解説していきます。

持続化補助金

持続化補助金では上記の表にも記載の通り販路拡大をテーマとしています。有店舗型の事業者が店舗改装を実施する、新規顧客獲得のために展示会に出展するなどの取り組みが多く見られますが、ITの有効活用が申請内容に含まれていることが加点の対象となることから、採択の確度を高めるためにもIT利活用を盛り込んだ申請を行うことが推奨されます。IT投資として代表的なものはwebサイトやweb広告を活用して行う新規顧客開拓やECサイトを構築して商品の販売を行うなどの事業が挙げられます。また、業務効率化に資するインストール型のソフトウェアの購入費用や、クラウドサービスの利用料金も対象となります。注意点としては、クラウドサービスやweb広告の出稿料金などクレジットカード払いになるものは、引き落としが実施期間内に行われていないと対象外となってしまいますので、予め引き落としのタイミングを把握しておくことが重要となります。
※パソコンやタブレット等の汎用性が高いハードウェアは対象外となります。

IT補助金

IT補助金はその名の通りIT分野の投資に特化した補助金となっています。3月末が公募期限だった一次公募は臨時対応として昨年度のIT導入支援事業者とITツールに限定されていましたが、本稿公開後に公募期限となる二次公募以降については新たに導入支援事業者及びツールの募集が行われる予定です。
(本稿執筆時点では二次公募以降の公募要領が発表されていないため、一時公募及び昨年度の公募要領の記載を前提とした記述となり、内容に変更が発生する可能性があることをご承知おきください。)IT補助金は他2つの補助金とは異なり、導入が可能なツールは上記のIT導入支援事業者が提供するITツールに限定されています。まずは自社の経営環境の診断を「経営診断ツール」を使ってオンライン上で行い、そこで見出された自社の経営課題の解決に資するIT導入支援事業者及びITツールを選定して申請をする形になっている点が大きな違いです。これは、ITツールはただ導入するだけでは有効に機能しないことが多いこと、またどのようなツール導入が自社の課題解決につながるかを自社で判断することが難しいことなどから、商工会議所やよろず支援拠点、ITコーディネータ等のITに強い支援機関やIT導入支援事業者のサポートを受けながら自社のニーズやIT活用のリテラシー等に合わせた最も有効なツールを選択して導入できるような枠組みとしたことによります。
また、補助金額の大小でA類型(補助額40万円〜150万円)とB類型(150万円〜450万円)の2類型に分かれ、類型ごとにITツール(ソフトウェア)が持つ業務プロセスを規定数含んでいることが求められます。

図 1 補助対象となるITツール
(出典:平成30年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業公募要領)

IT補助金では、先にも述べた通りITツールとして提示されている選択肢の中から自社のニーズに合致し、類型ごとに必要となる業務プロセスをカバーするパッケージソフトを単体または複数組み合わせるという形になりますが(システムのスクラッチ開発は対象外)、ソフトウェアに加えてオプションとして他サービスとのデータ連携を行うツールや、業務パッケージのフロントエンド機能としてのECサイトのようなwebサイト、また役務として導入時のコンサルティングや研修、保守サポートなど実運用において必要な費用を付加することができます(これらもIT導入支援事業者がツール登録していることが前提となります)。
他2補助金と違い、申請書の記載で差別化することが難しいため、いかに自社の課題と導入するITツールを合致させるか、また実効性のあるツールをどう選ぶかがポイントとなります。専門家の力も借りて、より高い効果をもたらすであろうツールを導入していきましょう。

ものづくり補助金

ものづくり補助金では、事業者の経営革新に資する設備投資が対象となりますが、過年度の公募からの変更点として、補助金事業の実施により付加価値を向上させること、その成果を従業員に還元するための賃上げを実施すること(給与支給総額の増加及び最低賃金の増加)を事業計画に組み込み、従業員に表明することが求められるようになりました。本要件に反した場合は補助金の返還規程も謳われていることから、より実効性のある事業計画を作成することが必須となります。
実際に応募する際は類型が4つに分かれますが、IT投資で利用がしやすいものとしては、A2新たな生産方式の導入・B1新役務(サービス)開発・B2新たな提供方式の導入の3類型が挙げられます。
A2の新たな生産方式の導入としては、作業の進捗を見える化するシステムを導入する、生産ライン上にセンサーを導入し、取得データをAiで解析して不良品検知を自動化するなどIoTも含めたITの利活用を図る取り組みなどが想定されます。
B類型では、IT導入補助金では不可能なシステムのスクラッチ開発を伴った新サービスの提供や(B1新役務・サービス開発)、商品サービスの新たな提供方式の導入を実施する際に活用が可能です。
いずれの類型においても重要なポイントとして、経営革新としてのテーマが明確であること、ITの導入が目的ではなく経営革新を実現するための手段として適切に活用される形になっていることが挙げられます。
特に本年度は新型コロナ対策をテーマとして組み込むことで加点措置もあることから、ITのメリットを生かして既存ビジネスに遠隔型・非対人型の要素をプラスした新役務・サービスを提供するなどの進取的な取り組みは高く評価されるであろうと想定されます。

おわりに

ここまで生産性革命推進事業に係る「持続化補助金」・「IT補助金」「ものづくり補助金」の3補助金をITの導入に活用するという視点から説明してきました。
いずれの補助金を活用するのが良いかは企業の規模やITの利活用の状況によって異なりますが、自社の課題としてIT導入とその活用を考えている企業では活用できるケースが多いのではないでしょうか。
また、先にも述べた通り、本年度から通年での公募体制となり、自社にとって最適なタイミングで応募することができるようになっています。上手にこれらの補助金を活用して自社の経営資源の強化に役立てていただければと思います。