ICT活用企業紹介

そのキャッシュレス対応ちょっと待った!?

美容業S社

企業概要

S社は、創業40年目の美容業である。代表のM氏(70代)、その娘S氏(40代)とパートスタッフの3人で切り盛りしており、規模はセット台3面・シャンプー台2台の典型的な地域密着店である。

当店の課題

顧客層は、50歳代~70歳代のお客様が中心であり、代表のM氏と共に年齢を重ねてきているので、信頼関係は強いものの、今まで電車やバスを利用して訪れていたお客様が、次第に当店まで足を運べなくなってきたため来店回数が減少していた。一方、その娘S氏は、30歳代~50歳代の男性客が6割ほど占めている。男性客はリピート率が高いものの、客単価が伸びづらい特徴をもっており、今後の当店の売上高向上や生産性維持を考えると、高単価を狙えるターゲット層を、新しく集客する必要があった。

キャッシュレス・消費者還元事業を利用

そんな中、商工会議所の会報誌で知ったのが「キャッシュレス・消費者還元事業」である。もともと代表のM氏(70代)も、その娘S氏(40代)も根っからの「現金主義者」。クレジットカードも使ったことがない。一方、S氏の30歳代~50歳代の顧客から、楽天ペイ、nanaco、SUICA、LINEpayの利用可否について、以前から問い合わせをもらっていた。「もしかしたらキャッシュレスのインフラが整えば、新規顧客の開拓にも繋がるのでは…」「業務ももっと効率的になるのでは…」と考えたS氏。持前のポジティブ思考と行動力で、慣れないながらQRコード決済のPayPayと決済代行のAirpayを導入した。

消費税率引き上げのあと、日本に居住する消費者を対象としたキャッシュレス決済サービスに対して、一定の期間実施される事業。期間中は中小企業に対し「決済端末無料・決済手数料負担減・消費者還元5%」等のメリットがある。

何だかよくわからない

いざ、導入してみると「これは確かに便利かもしれない」と思う一方で、「本当に新規集客に繋がっているか実感湧かないし…」、結局「キャッシュレス決済分の集計を別途しなければならない…」というデメリット面も明らかになってきた。「果たして自身の導入の仕方が正解だったのだろうか…?」と次第に不安に思うようになってきた。そこで商工会議所の専門家派遣制度を使ってITの専門家を招聘したのである。

典型的な失敗パターンに陥る

専門家からは、「ああ…。それは『ツールの知名度』と『導入の手軽さ』ばかりに目がいって、本来の課題解決や期待効果を無視したことで行き詰まる『典型的な導入失敗パターン』ですね。」と一刀両断された。
クラウドのような月々数千円で利用できるシステムも、数億円の大規模システムにしても、「本来の課題解決や期待効果を明らかにせず」に、導入が上手くいくことはほぼない。要するにIT導入に全く慣れていないS社は、陥りがちな典型的な失敗パターンにハマってしまったわけである。そこで専門家の指導の下、下記のような業務フロー図を提案された。

【現在の業務フロー図】

現状の業務フロー

目的と効果を明らかにすることが大前提

この業務フロー図は、現在のシステムと自社の業務と現状の課題を明らかにしたものである。ポイントは1つ1つの業務の問題点を明らかにしたうえで、ITによってどんなことが解決できるのか?どんなITツールが最適なのかを客観的かつ具体的に明らかにしたものである。当初S氏は、「新規集客・業務効率=有名で簡単なキャッシュレスツール」と「漠然」と考えていた。しかしながら、そもそもその「漠然」が間違っていたのである。

例えば「新規集客」を考えるのあれば、「認知度向上・予約利便性を高めるホームページやWEB予約ツール」が有効であるし、「会計の手間を減らしたい」という目的であれば、「クラウド会計と連携するキャッシュレスツール」を本来選ぶべきなのである。しかしながら、一般的なIT導入初心者は、そういった具体的な目的や効果をよく考えず、安易に『知名度』と『手軽さ』だけで、ITツールを選んでしまい、導入してから「なんだかよくわからない」となってしまうのである。

【今後の業務フロー図】

今後の業務フロー

ITツールでビジネスモデル変革が可能に

結局、S社は上記の業務フローを目指すべく「ホームページの作成」と「クラウド会計の導入」に少しずつ取り組むこととなった。もちろん、これらのITツールを同時に導入するわけではない。初心者のS社にとって、1つのキャッシュレスツールを導入するだけで一苦労であり、それで業務効率が落ちてしまったら、本末転倒だからである。但し、この新しい業務フロー図を作成することで、当店にとって「解決すべき課題は何か?」「何を優先的に導入すべきか?」「選ぶ基準は何か?」がかなり明確になり、以前のように「なんだかよくわからない…」「どこに向かっているかわからない」ということがなくなった。