ICT活用企業紹介

外部環境変化に迅速に対応したテレワーク導入

コンサルティング業S社

昨今の中国・武漢に端を発した新型コロナウィルスの感染拡大により、中国からの原料や製品の供給停止、観光客の流入停止といった直接的な影響もさることながら、市中感染の発生に端を発した政府による時差出勤・テレワークの推進を呼び掛ける事態になっています。さらに、この3月から小中高等学校のほとんどが休業するなど追加の措置も行われ、特に子どもがいる世帯ではこれまでのように職務にあたることが難しくなるなど、業種業態を問わずあらゆるビジネスに影響が出始めています。

今回は、こうした状況下、急速にニーズが高まったテレワークを迅速に導入・実施した企業をご紹介します。

企業概要

S社は、栃木県に本社を構える、今年で創業10年を迎えるコンサルティング会社です。
社員数合計15名と地方のコンサルティング会社としては中堅の規模を持ち、主に営業及び実地でのコンサルティングを行う男性社員(以下コンサルタント)と社内でバックオフィス業務を行うパートタイム勤務の女性社員(以下アシスタント)がほぼ半々となっています。
元々コンサルタントは社外での仕事が多く、日中は社内との意思疎通が困難になることも多いことから、カレンダー共有や社内サーバでのデータ管理、セキュリティ向上のためのUTMの導入など業務効率化・システム化のための施策を実行していました。
アシスタント陣は子育て世代の主婦がほとんどで、個々人ごとにふさわしい勤務形態も変わりうることから、将来的にVDI(仮想デスクトップ)の導入を含めたテレワークの導入を検討している状況でした。

急遽テレワーク導入に舵を切る

そんなS社でしたが、この度の新型コロナウィルスの影響によるテレワーク導入推進の流れに即応するため、現状の環境を最大限生かした形でテレワークを実施することになりました。2/17にテレワーク推進の発表があってから準備を開始し、1週間足らずでテレワークでの業務開始に漕ぎ着けました。

今回リモートワーク用に新たに導入したサービス及びツールは以下の通りです。

・GSuite by Google Cloud(https://gsuite.google.com)
Googleが提供している、無料でも提供されているGmail、Googleドライブなどのオンラインアプリケーションを法人利用できるサービスです。S社ではこれまでカレンダー機能と一部部門でクラウドストレージ機能(1アカウントあたり30GB)を中心に利用していましたが、今回のテレワーク実施にあたって2TBにドライブ容量を増やして社内サーバの情報をストレージ上に移設しました。
GSuiteは99.9%以上のSLAを保証していますが、BCPの観点から考えると全てのデータをGSuiteに依存することへの懸念もあり、これまで使用してきた社内サーバはGoogleドライブのバックアップとして引き続き利用していく形としました。1時間ごとに差分バックアップを取得する設定とし、いざという時には社内サーバから必要な情報を取り出せるようになっています。
これまでの社内サーバと違い、会社の外からでもデータへのアクセスが容易に可能となり、利便性も向上しています。
・zoom(https://zoom.us)
リアルタイムでビデオ会議と画面共有・リモートコントロール等が行えるサービス/アプリケーションがzoomです。一部コンサルタントが社内および対外的な打ち合わせに使用していましたが、今回コンサルタント全員+事務所用に有料アカウントを取得して無制限に使用できるようにしました。
テレワーク勤務しているスタッフは、勤務中は基本的に事務所用のアカウントに常時接続し、事務所にいるスタッフ及びテレワーク勤務中のスタッフ同士でリアルタイムに会話や画面共有による打ち合わせ等を随時行うことができ、雑談も含めて比較的事務所に出勤している時と変わらない環境で仕事ができています。
・VPN
自宅からインターネットにアクセスする際のセキュリティを担保するものとして、UTMに備えられているVPN機能を利用し、社内ネットワークを通して接続する環境を整えています。当然各PCはOSのアップデート、セキュリティソフトのインストール及びアップデート等の対策は行っていますが、さらにセキュリティレベルを上げるために外部からの接続時はVPN経由での接続を義務化することとしました。
・ペーパーレス
まだまだ紙の資料が多いコンサルティング会社としてハードルが高かったのが資料のペーパーレス化です。しかし、紙資料の持ち出しはセキュリティの観点からも行いたくないことから、基本的に必要な紙資料は複合機でスキャンしてPDF化し、自動的にGSuiteのGoogleドライブ上にアップロードされる形にすることで、自宅ではデータの形で閲覧することとしました。将来的には社内の全データをデジタル化することを目標としています。
・PCのセキュリティ
導入検討時はセキュリティの観点からVDIを利用してのテレワークを想定していましたが、今回は既存のインフラをそのまま転用できることから、会社から貸与しているPCを持ち帰って業務利用してもらう形を取りました。
業務データについては基本的にクラウド上のデータを直接閲覧・編集することにはなりますが、端末に一部のデータは保存される状態になるため、以下の対策を実施しています。
●PCへの対策
・端末のパスワード難読化と2段階認証・公衆wi-fiへの接続禁止
●物理的な対策
・紛失対策の実施(会社→自宅へのPC持ち出し時は直行・直帰)
・公衆の目に触れる場所でのPC利用禁止(カフェ・電車内等)
●ウィルス対策
・OSアップデートの実施
・ウィルス対策ソフトの更新
・VPN接続によりUTMを通じてインターネット上にアクセスし、ウィルス対策ソフトで対応しきれないマルウェア等への対策
・情報セキュリティ対策
テレワークを導入する際に、特に経営者・マネジメント層として懸念されるのはセキュリティに対する備えではないでしょうか。通常の会社勤務と違い、自社の情報がインターネット上を流れることになるため、セキュリティ対策は万全を期すことが前提となります。
今回の事例ではクラウドサービスとしてGSuiteを導入していますが、Gsuiteに限らずクラウドサービスを運用するにあたってはセキュリティを懸念される向きもあるかと思います。GSuiteではアカウントの2段階認証や端末へのセキュリティポリシーの適用など充分以上に考慮されているため安全性は充分に高いと言えるでしょう。

なお、総務省が「テレワークセキュリティガイドライン」(現在第4版)を発行しています。導入の際の参考になると思いますので、ぜひ目を通しておくことをお勧めします。

テレワークの効果と課題

実際にテレワークを実施しての効果および課題として次のことが挙げられます。

●効果

  1. zoomの利用によりリアルタイムで会話ができるため、各人が比較的会社としての連帯感を持ちながら業務に当たることができる
  2. 勤務時間をフレキシブルにすることができる
  3. 通勤時間が不要になるため、その分の時間を別の部分に使える

●課題

  1. 効果2の逆張りで、労働時間で成果を図ることが難しくなる
  2. 職務に際して自己判断部分が増えるため、働く側にも一定以上のスキルが必要となる
  3. 1への対応としてひとかたまりのタスクを細分化し、標準所要時間を提示した上で取り組んでもらうなど、生産性にフォーカスした仕事の振り方を考えなければならない
  4. 新しく使うツール類への習熟度にムラが出てくるため、一定水準をクリアするためのケアが必要となる
  5. 家庭にwifi環境がない、または常時接続でも速度が遅いケースがあり、zoom常時接続が難しいスタッフもいる(今回は常時接続ではなくモバイルwifi貸与・テザリング活用等で対応)

まとめ

今回紹介させていただいたS社の事例では、ゼロベースからではなく一定の基盤が整備されていたことと、業務内容がテレワークに向いていたことを要員としてスピーディな導入・活用に繋がりました。また、経営者のITリテラシーが高かった故に経営者自らが旗振り役となって会社を牽引していったことが大きな成功の要因であると考えています。

大手企業では続々とテレワーク導入のニュースが聞かれますが、地域の中小企業においてはまだまだ多くの経営者・担当者のアレルギーが強いように感じています。また、業種業態によってはそもそもテレワーク化することが難しい企業もあることでしょう。
ただ、こうした危機的な状況でなければここまでドラスティックな改革には取り組みにくいのも事実です。小規模な事業者でも今回ご紹介したようなツール活用と業務の仕組み化及びITリテラシーの向上を図ることで、テレワークはきちんと業務に活きる形で導入できます。業務全体ではなくても、自社ならばどの業務にこうした取り組みが可能か検討してみることをお勧めします。