ICT活用企業紹介

ものづくり企業における段階的IT化への取り組み

製造業K社

今般、新型コロナウィルスの影響により、これまでのビジネスモデルが立ち行かなくなり事業転換を余儀なくされている企業も多くなってきています。一方で、早くからタッチポイントを増やし、ECなどのプラットフォームを活用してきた企業には大きなチャンスが訪れている状況となっています。
今回は、こうした状況下、ECのニーズ増大による受注の増加に対応するため、バックエンド業務におけるITの導入に取り組んでいる企業をご紹介します。

企業概要

K社は、栃木県益子町に本社を構える、地元産の焼き物として著名な益子焼の製造販売を行っている会社です。益子焼の製造会社としては中堅の規模を持ち、ECにも10年以上取り組んできたことにより、現在では売り上げの柱のひとつとなっています。
前述のコロナウィルスの影響により、来店型のビジネスが成立しなくなってしまい、春と秋の年2回開催され、益子焼の製造・販売事業者が最も売り上げを稼ぐ「陶器市」も開催を断念する状況下、ECはより販路として重要性が高まっている状況下にあります。
また、当社は製造工程に早くから職人毎の差が出にくくなるよう工夫しており、安定した品質での多品種・大量生産に対応していることから法人向けの需要を多く獲得しており、こちらも一時は売上低迷していたものの、コロナ禍からのビジネス回復局面に合わせて売上も向上し、需要が一層高まっているところでした。

受注・製造業務のボトルネック

そんなK社でしたが、需要の高まりに対してボトルネックとなっていたのが、紙ベースの手作業に頼っていた製造工程への発注書の作成と陶器を焼くための窯入れの工程管理でした。
いずれも考えなければならない要素が多岐に渡ることから属人性が高く、代表者のみが行っていた業務であり、代表者のストレスともなっており、この部分の改善を図れないかという相談を受けました。相談を受けた当初は、ERP導入により全行程をIT化することを想定していましたが、ヒアリングを行い、業務の概要を把握した上でアドバイスしたのは、全社的にシステムを導入することより、より業務の生産性向上に寄与するポイントに絞ったIT化を行った方が費用対効果が高いということでした。

改善の方向性

というのも、現状の作業工程においても、やりとりこそ紙を使ったアナログ的なものではあるものの、実際に紙に記載される項目は業務で必要なものに集約化されており、かなり高度に仕組み化されていたためです。性急にIT化を進めるよりも、アナログの良い部分は残しながら、段階的なIT化を図っていくほうが結果としての生産性向上につながると判断したためです。
また、現状で代表者の専担業務となっていた、一見複雑に見える項目も分解してみれば一定の法則に従ってパターン化が可能であるということが見えてきました。特に、発注書の作成業務については、業務上発生するタスクのフローチャートを起こし、可視化したことで、仕組み化・システム化の方向が見えてきました。業種独特の内容こそあるものの、基本的には一般的な在庫管理システムに備わる項目に何点か独自のパラメータを付加すれば実現できることがわかりました。
一方で、窯入れの管理については一定のパターンこそ見出せそうではあったものの、判断の優先順位がケースバイケースで変動することから、現段階での実装は見送り、まずは判断基準の見える化を行い、優先順位についても可能な範囲で明確化することで他のスタッフとの意思疎通を可能にすることを目指すこととなりました。

具体的な取り組み

以前にシステム開発業者に同様のシステムの開発依頼を出した際は、完全なスクラッチ開発を前提とし、数百万からの開発費用見積が出ていましたが、先の検討でそれほど難しい仕組みを導入しなくても望む機能が実現できることが見えていたため、今回はサイボウズ社の提供するクラウド型のデータベースシステム「kintone」を利用することにしました。導入・運用コストが低廉であること、システムがクラウド化することで複数拠点化されている現場間でもデータのやり取りが柔軟に行えるというメリットも見逃せない点でした。
また、今後の運用フェイズを通じた改善についても、都度システム開発会社に任せるというだけでなく、自社での開発もノウハウを蓄積すれば不可能ではないという点も重視した点のひとつです。

現在、まさに現在進行形で開発作業が行われているところですが、モックアップでの検証段階をクリアし、実運用に向けた最終的な開発作業が進行しているところです。開発開始から2ヶ月ほどでシステムの稼働までこぎつけられる見込みです。比較的時間をかけずに開発が完了するのもkintoneならではと言えるのではないでしょうか。

まとめ

今回紹介させていただいたK社の事例では、IT化を進める分野が完全にゼロスタートではなく、アナログながら仕組み化が進んでいたこと、また、経営者の仕組み化に対する意識が高かったため、システム化すべき部分、システム化によるメリットが大きい部分の判断がスピーディかつ明確にできたことが大きかったと考えられます。
地域の中小企業、特に今回ご紹介したような小規模事業者が多い業種においては、まだまだIT導入に対して経営者・担当者のアレルギーが強いように感じています。
ただ、こうした状況だからこそ、一気に改革に取り組み差別化を図っていくことが中長期的な競争力の強化に繋がってきます。業務全体ではなくても、自社ならばどの業務にこうした取り組みが可能か検討してみることをお勧めします。