百貨店からの発注減少どうする?
東京銀器は、伝統的工芸品に認定されている由緒ある銀器だ。江戸末期の初代平田禅之丞氏より代々職人の技が伝承されてきた。
現在、約70人の銀器職人がいるが、彼らの弟子はごくわずか。主に百貨店で販売されている和茶器やグラス、花瓶などの高級銀器は、リーマンショックを機に販売量が減少している。
このような状況下、三男一女が父・上川一男社長(雅号・上川宗照氏)のもと伝統技術を受け継ぎ育てている「伝統工芸一家」が、東京都台東区に工房を構える日伸貴金属である。
動画や画像で伝統技術を訴求
上川社長はビジネス環境を次のように語る。
「店舗を出せば相当なお金がかかります。インターネット活用の取り組みをせざるを得なかったのです」
同社が取り組んだのはホームページのリニューアル。ITコーディネータのアドバイスを受け、東京銀器というブランド、品質の高さ、伝統工芸一家であることなど強みを整理し、それらを文章や写真、動画で紹介。黒を基調とした新しいページが完成した。専門家には、合わせてSEO対策(検索エンジン対策)も依頼。
高価な銀器はネット上で契約を完結させるのは難しいため、社に来てもらい、直接説明してオーダーを受け付けることを想定した。
リニューアル後は来訪者が増え、中国やシンガポールなど海外からも。その場で100万円の茶器を買い求めた顧客もいたという。また、修学旅行の訪問先として同社の「体験教室」が人気となっており、東京銀器ブランドの浸透へ手ごたえを感じている。