ICT活用企業紹介

ビジネスの順調な拡大を支えたスマートフォン活用事例

さいたまヨーロッパ野菜研究会

小規模企業でも、他社と連携して事業を行うことで、単独では得られない大きなビジネスチャンスを掴む

埼玉県では、個人事業者である農業経営者が集まり、グループを形成して新たなビジネスを展開している。さいたまヨーロッパ野菜研究会だ。市場での流通量が少ないヨーロッパ野菜に特化し、グループで連携して生産体制を構築することで、市場が求める供給量を確保。複数の卸会社との取引にこぎつけ、埼玉県内を中心に数多くの飲食店に納入している。
このグループのビジネスの拡大をスマートフォンが裏で支えている。

販路が拡大し、取引品目も増え、順調にグループのビジネスが拡大していく中、このグループは一つの問題に直面

出荷量が増えるにつれて、複写式の出荷伝票をもとにした月末の請求書作成作業が大きな負担になってきたのだ。いつの間にか請求書の明細行は1000行を超え、請求書作成を担当するメンバーに大きな負担となってきた。
個人事業者の集まりなので事務要員はいないし、新たにスタッフを雇うのはもう少し先にしたい。隙間時間でなんとか事務作業をこなしていたが、次の出荷ピークには、本来の栽培・出荷作業に支障が出てしまうことが懸念された。

出荷伝票をスマートフォンに置き換える

日々の出荷の都度、各自が自分の出荷量をスマートフォンに入力。請求書作成を担当するメンバーが月末にデータをチェックして請求書発行する形だ。
1000行を超える伝票明細を一人で入力するのではなく、それぞれが分散入力することによって、月末の請求書作成を効率よく行うことが可能になり、好調な取引のペースにブレーキをかけることなくビジネスを拡大し続けることができた。

このグループのように、共通の事務所は構えず新しいビジネスを立ち上げるのはごく当たり前のことだ。集出荷などの共同作業の際は定期的に集まるとしても、毎日顔を合わせるわけではなく、事務仕事はそれぞれ持ち帰って処理する。このようなグループで情報を共有して業務の効率アップを図る場合には、時間的・空間的制約を克服できるスマートフォンと、「クラウド」といわれるICTが大きく役に立つ。
クラウドでは、インターネットの先にデータを記録、蓄積することができるため、アクセス権限を持つメンバーであれば、自宅のパソコンや外出時にはスマートフォンからでも、いつでもどこからでもその情報にアクセスして確認、共有することができる。
小規模企業が他社と連携して事業を行う際に、ICTを積極的に活用することで、好調なモーメンタムを失うことなくビジネスを拡大していくことが可能になるというわけだ。

グループでのICT活用には特有の課題もあるので注意

スマートフォン・タブレットと一口に言っても、ご存知のように、iPhone、iPadからAndroid、最近ではWindowsタブレットといったように、端末の種類(OS環境)が様々あり、アプリケーションソフト(以下、アプリ)によっては、iPhoneだけに対応していたり、Androidだけに対応していたりと、一部の端末では使えないケースがある。実際に今回の事例でも、実は一番古くからのAndroidユーザーの端末、つまり、OSのバージョンが最新ではないモデル、で最新のアプリがインストールできないということがあった。
グループでのICT活用のためには、各自のICT環境が必ずしも同一ではないという前提に立って、グループで共通に使えるアプリを見つけ出すことが必要になる。

また、これはスマートフォン活用全般にいえることだが、様々なビジネス向けのアプリが世に出ているが、同じようなアプリが複数存在する場合が多く、比較検討して選ぶことに多くの時間を費やしてしまいがちである。しかも、そもそもアプリというものは、洋服で言えば既製品。オーダーメイド品と違って安価であるが、その分、多少の“だぶつき”は許容しなければならない。つまり、いくら探しても、自分たちの業務に100%フィットするものは存在しないと考えたほうがよい。
となれば、スマートフォン活用においては、多少の使いにくさを許容するという「割り切り」が肝心となってくる。多くのアプリが試用期間は無料で使えるようになっているのは、ある意味「割り切ってもらうため」の期間ともいえる。実際に試してみて、フィーリングとおおむね8割合っていれば、それに決めてしまってよいと筆者は思っている。

グループでICT活用に特有の課題を解決するポイント

一つには様々なアプリを知っている専門家に相談すること。コンサルティング費用がかかっても結果的にアプリ選択の時間が短縮できれば近道になる。
しかし、何よりも大切なのは「目的意識」だ。ICTの導入そのものが目的化してしまわないように、何のためのICTを活用するのか、最終的なベネフィットは何か、常にその点にさかのぼって考えると、判断軸が明確になり、迷いが小さくなる。
ICTはあくまで道具。メリットもあればデメリットもある。トータルでビジネスに役立つかどうかを常に俯瞰的に判断することが大切だ。

http://saiyoroken.jimdo.com/

さいたまの野菜農家・シェフ・種苗会社などが協力して「シェフが本当に欲しい野菜」をレストランに提供し、味わっていただくことを目的とした研究会。
さいたま市岩槻区、見沼区を中心に現在11名の若手農家がヨーロッパ野菜の栽培に励んでいる。芝浦工業大学、さいたま市産業創造財団と連携して出荷伝票のスマートフォンへの置き換えに取り組んだ。