ICT活用企業紹介

VUCA時代に成果を出すICT活用事例

情報サービス業A社

1.はじめに

VUCAとは「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity:曖昧性」の各用語の接頭辞を表します。様々な組織では、VUCAの各要素に伴う「Risk(リスク)」変動の波に対して、いち早く舵を取り、事業としての「Value(価値)」を創出しながら、対価としての「Benefit」を得ることが求められます。
ビジネスにおける内外の環境変化に対して、いち早くICT(情報通信技術)を活用しながら環境に順応することのできる企業が、競争優位性を高める事ができ、ビジネス成果を享受することができます。

本事例で紹介するA社は、「情報サービス」を生業とする事業者です。A社は関東圏(東京・神奈川・千葉)を中心に事業を展開している企業であり、「法人向けのBtoB型」と「ユーザー向けのBtoC型」の事業形態に区分されます。
A社が抱える主たる経営課題は『新規顧客の開拓に向けた自社サービスの認知度向上』と『既存顧客に対するフォローアップの強化』です。
ビジネスが拡大するにつれて、法人顧客や一般ユーザー向けの対応が煩雑になることが予見でき、現行の少ない担当者だけでは管理が困難になると考えていました。そこで少ない人員でも生産性を高めながら、ビジネスを拡大する為の仕組み作りとしてプロジェクトが発足することとなりました。
本稿では、「法人向けのBtoB型」事業にフォーカスを当てたICT活用の事例紹介を行います。

2.現状把握と対策の狙いどころ

(1)現状把握

A社の「法人向けのBtoB型」事業では、新規顧客を開拓するアプローチとして、社外で名刺交換を行い、電子メールで法人顧客と打合せのアポイントをとり、法人顧客との打合せ時に「配布資料(紙)」による自社サービスの説明を行うことで、新規顧客との契約に繋げていました。
また、電話やWEBサイトからの自社サービスに関する問合せに対しては、対応履歴としての知恵(ナレッジ)を残こす事が出来ていなかった為、類似した問合せに対して、過去の対応履歴をもとに即時性の高い顧客対応ができていない事が、ビジネスプロセスの過程として把握することができました。

(2)対策の狙いどころ

A社のビジネスプロセスの現状を踏まえて分析を行うと、特定の担当者の経験に強く依存(属人的)した法人顧客の対応をしていたため、 「顧客管理の情報共有が効率的に行われていない」ことによって、特定の担当者が不在時のケースでは、法人顧客への対応やフォローアップが遅れることがありました。
また「自社サービスの魅力について組織的に情報の発信が効果的にできていない」ことが”気づき”としてわかりました。

3.目標の設定

A社が抱える主たる経営課題より「新規顧客の開拓に向けた自社サービスの認知度向上」および「既存顧客に対するフォローアップの強化」に対する目標設定の概要は、以下の通りです。
3か月の期間内で、プロジェクトとして下記の主要な目標を達成することを大きな目標として掲げるとともに、個々の主要タスクに対して、具体的な目標値を設定しました。

  • 組織として法人向け営業に関する運用ルールを文書として規定すること。
  • 顧客がどのサービスに対して最も関心が高いのかという営業記録をシステムとして蓄積する仕組みをつくること。
  • 顧客に対して定期的に自社サービスの魅力を情報発信する為のシステムとしてのコミュニケーションチャネルをつくること。
  • システムを活用しながら、運用ルールの遵守率を測定・評価しながら、目標の設定値を最適化すること。
     ⇒自社サービスの情報発信の頻度。[例:週に1回、メールで通知する]  ⇒自社サービスのWEBサイトのページを更新する[例:固定ページは4半期に1回、更新する。投稿ページは週に1回、更新する]等

4.対策検討と実施

A社では限られた予算とプロジェクトメンバーのリソースを前提として、プロジェクトのタスクとして誰がいつ迄に実施すべき必要があるのかを洗い出して定義する必要がありました。
主要なタスクとして「①業務フローの見直し」「②システム導入」「③運用ルールの規定」を対策として定め、QCDの観点(品質:Quality、コスト:Cost、納期:Delivery)を考慮しながら、それぞれの具体的な対策について検討を詰めながら、実行に移すことがプロジェクトとして求められました。

(1)業務フローの見直し

A社では「現在のビジネスプロセス」を可視化したうえで、「あるべき姿のビジネスプロセス」を策定したうえで、必要なシステムを導入するアプローチを採用しています。営業担当の業務フローを策定して、業務の見える化を行う事例としては、今まで紙で出力していた情報を電子化することで業務の中のある作業プロセスを省略することができ、業務を効率的に行うために「システムとして要求される機能」を、予め関係者と協議をしながら「システム要件として明確化」することができるようになります。

(2)システム導入

A社では、3か月という限られた時間と予算の制約事項があった為、自組織でサーバー機器を購入して、システム構築と管理を行う「オンプレミス型」の運用は採用せず、クラウドサービス型で早期に導入ができ、システムの利用状況に応じて課金体系が異なるものを選定しました。
また、多様な自社サービス情報の管理について、柔軟でかつ容易にカスタマイズができることを要件として検討いました。
A社では「あるべき姿の業務フロー」に対して、「システム要件として求められる機能」を具備した「SPIRAL(r)」と呼ばれるクラウド型サービスの導入をソリューションとして採用するに至りました。 

■SPIRAL(r)で出来ることの例:

  • 法人顧客の営業情報を管理するWEBフォームを作成して、営業担当者はデータベースに情報を一元管理しながらナレッジの情報共有を行うことができる。
  • 顧客満足度調査としてWEBフォームによるアンケートページを作成し、任意の法人顧客に対してメールで一斉に通知することができる。

■SPIRAL(r)の特徴と採用理由の例:

  • 顧客情報の管理としてセキュリティ対策がしっかりしていること
  • メール配信の到達率が高いこと
  • サポートが充実していること
  • システムのカスタマイズが容易であること
  • ユーザー向けのセミナー等を定期開催していること
  • サービス利用時に初期アカウントの発行費用が必要であること
  • サービス利用時の利用件数に応じて段階的な課金体系であること

(3)運用ルールの規定:

A社では運用ルールの規定を行うための重要なINPUT情報として、「(1)業務フローの見直し」で策定された「あるべき姿の業務フロー」と「(2)システム導入」時の検討で明確化された「システム要件として求められる機能」について考慮する必要があります。
「骨子となる運用ルールの案版」をドキュメントとして策定し、営業担当者等の組織の有識者と協議を行いながら、「運用ルールの精緻化(業務の評価指標を含む)」を行います。成果物としての「運用ルール」の規定は、利害関係者の合意を得たうえで周知・展開することがポイントとなり、運用ルールの形骸化を防ぐことに繋がります。

5.効果の確認

A社の「法人向けのBtoB型」事業では、新システムおよび運用ルールを導入することによって、以下の効果が確認できました。

(1)新規顧客の開拓に向けた自社サービスの認知度向上

  • 主要な経営課題「新規顧客の開拓に向けた自社サービスの認知度向上」では、新システムを活用して、法人顧客へ定期的に自社サービスの情報を発信することによって、自社サービスに対する「問い合わせ件数の増加」や「取引額の増加」が確認できました。

(2)既存顧客に対するフォローアップの強化

  • 主要な経営課題「既存顧客に対するフォローアップの強化」では、新システムの活用によって、営業担当者の営業記録がナレッジとして共有されることによって、特定の営業担当者だけではなく、他の担当者でも即時性をもって対応することができるようになり、結果として新システムを活用した「顧客満足度調査」による回答として、法人顧客からの高い評価を得ることができました。
  • 定期的に「顧客満足度調査」を行うことで、既存の法人顧客との信頼関係が強化されることによって、今後に向けた改善点に関する回答を確認することができました。

(3)副次的な効果

  • 副次的な効果としては、A社の自社サービスが徐々に認知されていくことによって、A社と法人顧客における「アライアンス(事業提携)」の引合いが増加する結果が確認できました。

■他社とのアライアンス(事業提携)によるメリット

  • 提携先からの紹介によって新規法人顧客の取引先が増加。
  • 提携先の経営資源(例:設備やパートナーライセンス等)でビジネス機会が増加
  • 技術面での相互補完により、リスクを提携先企業とシェアすることができる。

6.標準化と管理の定着

A社では新システムを導入後に、規定された「運用ルール(業務の評価指標を含む)」が遵守されていることを定期的に評価することで、事業における管理の定着を実現しました。
規定された「運用ルール(業務の評価指標を含む)」については、ルール自体そのものが妥当であるかを定期的な見直しを行うことによって、組織として業務品質が向上する仕組みの構築ができました。

7.まとめ

本事例ではICT活用として、A社企業の課題を把握したうえで、ビジネスを効果的に運営するために最適と考えられるソリューションを選定し、自組織のビジネス拡大に向けて導入後の効果の確認を念頭に取り組まれた事例について紹介をいたしました。
ICTソリューションを導入したらプロジェクトとして終わりとするのではなく、「我々が目指すべきGOAL(目的)」に対して、効果を測定する上で必要と考えられる評価指標を設定する事によって、活動の過程で得られる情報を基に、投資対効果の評価を継続して測定することが出来るようになります。貴社のビジネスにとって有効と考えられるICT活用の機会は無数にあります。本事例が皆様のビジネスに対して一助となれば幸いです。
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